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大田さんと行く屋久島

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2002/03/27

大田さんと行く屋久島

 

 屋久島では、登山者が歩いた登山道の地面がえぐられていることに気が付く。人が歩けば、その地面は少しずつ削られていく。そしてその削られた部分に容赦なく雨が襲い掛かり、あっという間に土砂が流されえてしまう。

 宮之浦岳周辺では登山道を歩いていると、登山道の両側の地面が自分の胸の辺りまできている。1メートル以上も深くえぐれてしまった登山道。ところどころ岩盤が顔を出している。岩盤の上を歩きながら土を失ってしまった登山道の哀れな姿に胸が痛くなった。尾瀬では登山道を守る為に木製の橋げたのようなものを敷いている。この屋久島も被害が深刻になってから、やっと一部で登山道を保護する為の階段や通路が作られだしている。

 そして大田さんに注意されたのが、むやみにコケの上を歩いてはいけないという事。ついうっかりコケの上を歩いてしまっていた。
「コケの上を歩くとそのコケは枯れる。いたる所でコケが足型で枯れているんだ」
と聞かされた。これにも驚いた。人が歩いた後、足跡のように靴で踏まれた部分が枯れていくのだ。フワフワしているコケの上に寝そべって昼寝したら気持ちいいだろうな~と思っていたことを恥じた。コケはデリケートなんだ。むやみに触っちゃいけなかったんだ・・・。自然の中で日々学ぶことが多い。

 ところで、もうすぐエベレストに行くが、この屋久島には、エベレストとはまた違ったなにかがある。それは自然の生命力だ。動植物が支えあって生きている屋久島。屋久島の恵みの雨がこの森を生かしている。

 湿地帯の至る所にカエルの卵があった。あと数週間もすれば、この湿地帯もオタマジャクシであふれる。命あふれる屋久島の自然の中で過ごしているうちに、自分まで生命力が沸いてくるのが分かる。

 不登校だったイサ君が屋久島の子供達と触れ合い、一緒にこの森を歩いた。東京に戻ったイサ君が
「お兄ちゃん、僕も学校行きたい。でも東京は嫌だ。この屋久島の学校に入りたい」
と僕に訴えてきた。イサ君はこの4月から屋久島の小学校に編入する予定だ。心を閉ざしかけていたイサ君が屋久島の自然の中で子供達と交流しながら、たった4日間の間に学校に行くことを決心した。5年ぶりの学校。そして仲間達。

 僕も都会の人、人、人の渦の中、目まぐるしく変化していく生活のスタイルに、いつしかエネルギーを吸い取られてしまっていた。時に感情が湧きあがらなくなる。虚脱感に襲われる。この間、友達に
「最近の健さん見ていると、うちあげられたイルカのようです」
と指摘された。ふと気が付けば以前のように好きなように自然と接していなくなっていた。

 ここ数年、毎年行っているエベレスト清掃活動は、いろんな人に伝えなければ意味をなさない。自己満足で終わらせたくない。だから、日本全国、講演に出かけた。連日、講演、講演、講演だった。予想以上に反響もあった。子供達が僕の話しを聞いて動いてくれた。苦しいエベレスト清掃活動が報われた瞬間でもあった。だから、一気に突っ走った。事務所のスタッフも休日返上で僕の講演活動に付き合ってくれた。しかし、ある瞬間に自分がカラカラに干からびている事に気が付いた。そんな時に僕を救ったのが白神山地や屋久島の自然だった。特に白神山地のマタギの工藤さんとの出会いは大きかった。虚像も偽りもない澄んだ工藤さんの目は生き生きしていた。自然の中で生きている工藤さんの心はきれいだった。自然の中に身をおき、そこをベースにしながら自然との係わり合いについて考え、また行動していたい。イサ君と同じ心境なのかもしれない。やっぱり、自然の力は凄いや・・・。

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