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消されようとしている幻の湖「ふじみ湖」

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2002/07/16

消されようとしている幻の湖「ふじみ湖」

 

田中さん達と 田中さんから熱心な説明をいただきました

 エベレストから戻ったばかりだったか、僕のホームページの掲示板(カキコミひろば)に「ふじみ湖」という聞いた事もない名の湖の話題が展開された。茨城県、笠間市にあるふじみ湖の水を抜き、そこに産業廃棄物の公共処分所が建設される。そこで、ふじみ湖を守ろうと、地元住民が立ち上がった。採石場の跡地がそのまま放置され、そこに湧き水が湧き出し、いつの間にか美しい湖に湿地帯が形成された。そして地域住民に名づけられたのが「ふじみ湖」。1日100トン以上の水が湧き出すこの場所を茨城県は湖と認めず「水溜り」とし、湧き水も否定している。

 地域住民の一人、田中宏さんが「美しいふじみ湖を一度見に来てください。」と僕のホームページに書き込んだのがそもそもの出発点。僕は7月6日、ふじみ湖に向かった。カキコミ仲間達が何度かふじみ湖ツアーを企画し現地に訪れていた。その度に「信じられないくらい美しい」「心が癒された」「ふじみ湖を眺めていたら涙が出た」「エメラルドグリーンの湖」などの意見が寄せられていた。アフガニスタンから戻ったばかりの僕は「水」に飢えていた。それだけにエメラルドグリーンの美しい湖と聞かされて胸がときめいた。ふじみ湖手前で田中宏さんと合流。ふじみ湖が一望できる高台からふじみ湖を見た瞬間、思わずはっとさせられた。いつだったか幼年時代に父に連れて行かれたノルウェーで目にしたエメラルドグリーンの湖と同じ色だ。子供ながらにノルウェーで見たエメラルドグリーンの湖は衝撃的だった。今まさに目の前に展開するふじみ湖は幼年時代から忘れられなかった、憧れの湖。湧き水でできた湖水はスッカーンと底まで透けて見えた。一度人の手で破壊された自然がたかだか10数年で、形を変え、湖として復活した。そこには命が生まれた。湖畔にはトンボが飛び、湖には魚の姿が見えた。自然の回復能力の凄さに驚いた。生き返ったふじみ湖に再び人間の脅威が襲いかかろうとしている。今年10月から廃棄物の最終処分場建設が、このふじみ湖で始まろうとしているからだ。確かに、廃棄物の最終処分場は必要だ。しかし、何故、ここなんだ!湧き水が溢れるこの美しい湖、ましてや水源地とされているこの場所にどうして?僕にはまったく理解できない。

 皮肉な事に建設されようとしている廃棄物処理施設の名は「エコフロンティアかさま」。茨城県のホームページには「自然との調和を図りながら、最新の技術を導入して、安全性を最優先に全国のモデルとなる施設を目指す・・・。

 また、環境教育に関する見学、研修機能、自然保全の普及啓発の役割なども兼ね備えた先導的施設」と書いてあるが、これまた自然保護という名目の乱用、いや悪用ではないか。ふじみ湖に来ていた地元の中学生達に「このふじみ湖が廃棄物で埋められてしまいそうだけれど、どう思う」と聞いたら「すごく悲しい」「ゴミに埋められてしまうのは嫌。残してほしい」「ふじみ湖は私の好きな所。失いたくない」と答えていた。湖をゴミで埋め尽くすことが、環境教育になるという茨城県の発想は、はなはだ理解できない。環境教育どころか子供達を失望させるだけだろうに・・・。

 来年3月、日本で「水環境フォーラム」が行われる。世界中が「水」をテーマにどのように「水」を守り確保していくのか、真剣に取り組まれようとしているこの時代に議長国でもある日本で美しい湧水でできたこの湖を殺していいのだろうか。ふじみ湖を眺めながら僕は抑えがたい怒りや、社会の矛盾、哀れさを感じていた。そしてアフガニスタンで水が無い為に死につづけている子供達を思いだし、日本はどこかが狂っていると嘆いた。

 そしてテレビ報道でふじみ湖問題を放送していたが、地域住民への笠間市長や茨城県職員の傲慢な態度は凄かった。廃棄物処理施設を作るには300メートル以内に住む住民の同意が必要だとの県の規則がある。しかし、テレビ報道によれば事前にほとんど地域住民には知らせれていないままに決定したという。笠間市長の地域住民への説明会の様子を住民側がこっそりと撮影した映像がテレビで紹介された。事前に知らされていなかったと、指摘する住民に笠間市長はハッキリとこう言い放った。
「どこに作ろうと、賛成する人はいないでしょう。先に説明しても何をしても反対しか出てこない事も事実ですよ。そうでしょう!そしてら先に決定するしか・・・」
と言いかけて住民側から
「それじゃ、先に決定したという事か」と抗議され、映像はそこで途切れた。住民の同意があって決定されるべきルールが逆に決定があって後から同意させるというのが笠間市長の政治理念。お上に逆らうなと言わんばかりの勢いだった。

 マスコミがふじみ湖に関わる取材依頼をした際に、県職員から
「各マスコミには取材を配慮して頂いています」
との返答に、誰の為の政治や行政なのか!あなた方には説明責任があるだろう!と怒りを抑える自信がなくなった。過去にもこのような不幸な経緯を得て誰にも知らされずして殺されていった自然がどれだけあったのだろうか、そしてこのままその流れが続いていいのだろうか。たかだか小さな湖の問題と受け取る人もいるだろう。しかし、この小さな湖を取り巻く環境から僕は日本の政治家や行政側の自然環境に対する意識の度合いが見えてくる。

 そもそも政治家とは一体なんなのか。単なる職業でしかないのか。いや、政治家が職業であっていいのだろうか。国を変えたい、日本を美しい国にしたい、人が人として健康に過ごせる社会を目指したい、という哲学よりも、どうやら選挙に当選したいという欲ばかりの政治家が目につく。日本にいると何が正しくて何が正しくないのか、もうよく分からなくなってしまいそうだ。地方の県会議員、市会町会議員の多くが、己の利益のみに執着する輩に囲まれ、いつの間にか自身までもが伝染してしまっている。ふじみ湖がどのようにして廃棄物処理施設の場に決められたのかは分からないが、どうもきな臭い。僕には匂ってくるんだな~。

 このふじみ湖問題で、僕に何が出来るのか分からない。しかし、このまま何事もなかったように、その存在すら否定されたままふじみ湖が殺されてしまえば、これは取り返しのつかない不幸だ。そして時代錯誤の行政や政治に全てを任せてはいけないと、我々が立ち上がらなければならない時期がきているんじゃないだろうか。お上の言いなりになる時代からの脱皮。ふじみ湖は新たなテーマを我々に示しているのではないだろうか。

 

参考ホームページ
茨城県生活環境部廃棄物対策課

 

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