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アフガニスタンへ向けて(前編)

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2002/07/10

アフガニスタンへ向けて(前編)

 

ウズベキスタンの首都タシケントの市場にて

美しかった(!?)女性 砂漠に落ちていく夕日。きれいだったな~

 「健ちゃん、6月中旬にアフガニスタンにいくことになったよ」
「えっ!アフガニスタン!なんでまた・・・」
「素敵な宇宙船地球号」の企画でアフガニスタンの旱魃(かんばつ)を取り上げるんですって。そこで健ちゃんにナビゲーターの依頼がありました。がんばってね」
「・・・」
僕は突然のアフガニスタン行きに驚いていた。何故ならば、このやり取りは、僕がエベレストのベースキャンプから衛生電話で事務所に連絡を入れた際に突然聞かされたからだ。エベレストの雪空を眺めながら、アフガニスタンの旱魃を想像してみたが、ピンとくるはずもない。

 エベレストから帰国後、テレビ朝日で打ち合わせが行われた。8月から5週連続で世界各地で引き起こされている温暖化の現象や、このまま温暖化が進めば地球の未来はどうなってしまうのか、をテーマに追っていくこととなった。「晴れたらいいね」で富士山に登頂した翌日早朝、僕はウズベキスタンに向けて日本を発った。
「カブール以外の地方は治安の悪化とともに国連職員は撤退」
「カイザル氏が大統領に選ばれてから民族同士の対立激化」
などアフガニスタン関連ニュースはろくなのがない。機内のなかで
「どうして僕はこうも危険な場所ばっかりにいくのだろうか・・・」
と途方にくれていた。

 まずは、ウズベキスタンの首都タシケントにいく。タシケントは僕の予想とは全く違い人々の表情もラテン気質でいて実に開放的な雰囲気だ。町の作りもチリやアルゼンチンの田舎町を思い出させる。最も驚いたのが町を歩いている女性達の美しさ。世界中旅してきたが、この国ほど美しい女性が多い国を僕は知らない。日本にいれば間違いなくモデルと思われる女性達がわんさかいる。僕と、日本から一緒に来ているテレビ局のスタッフは思わず見とれてしまった。アフガニスタン前に目の保養ができた。ウズベキスタンからトルクメニスタンを陸路で通過し、アフガニスタンの国境を越え、ヘラート(アフガニスタン第二の都市)に向かう。ヘラート周辺の村や難民キャンプを訪れながら、砂漠化した経緯や被害を調べることとなった。タシケントからブハラまで空路で、ブハラからヘラートまで陸路でざっと1150キロ。移動だけで困難を極めた。2つの国境越えがあるのだが、国境の度に厳重なチェックを受け、国境を越えるのに5時間以上は費やす。ゲートが占められたままの国境で、じっと許可がでるまで待つ。車内の温度は48度。あまりの暑さに絶えかねて、我々が乗りつけたミニバンの限られた日陰に身を寄せ合った。ミネラルウォータがいつの間にかお湯と化し、ウズベキスタンで買い込んだサラミとパン、そして道路脇の川に袋に詰めたビールをロープに結び投げ込みなんとなく冷やしてから些細な食事が始まった。辺りは砂漠化した高原。
「ここでは予定通り事が進むわけがない」
と、半分諦めモード。フライパンのように熱を発する道路にしゃがみこみ、
「なんで俺はここにいるんだ~」
と疑問を感じていた。そんな時に我々を救ったのが真っ赤な夕日だった。砂漠に落ちていく陽の光はなんとも寂しげで、それでいて何故かホッと心が和むような、不思議な世界だった。 

 ウズベキスタンからトルクメニスタン入りを果たし、アフガニスタンの国境に近づくにつれ空気が緊張していく。そういえば、ウズベキスタンで現地の通訳のスタッフがなかなか決まらなかった。
「この時期にアフガニスタンにいくのはリスクがありすぎる」
「親に反対され行けません」
「結婚を控えていますから、やはり、危ない所は・・・」
と何人かに断られていたのだ。その意味がアフガニスタンの国境に近づいた時に分かった気がした。アフガニスタンの国境越えも大変だった。銃を構えた兵士にほったて小屋に連れていかれペルシャ語でなにやら騒いでいる。何を言っているのか意味不明。荷物もパンツまで一枚一枚広げて隅々までチェックする。彼らがいつ盗賊に変貌するかという不気味な恐怖を感じながら時間だけが過ぎていった。それにしても彼らのひげは濃すぎる。まるで羊の毛のようなフワフワとしたひげが密集している。
「そのひげは、暑くないのか」
とジェスチャで聞いたら
「これがアフガニスタンスタイルだ!」
との返事。あまり質問に答えていないような気もしたが・・・。残念なことに我々がウズベキスタンから持ち込んだビール、ウオッカは全て没収された。当たり前といえば当たり前だけれど、あ~無念。アフガニスタンの国境からヘラートまでの道のりはそれまでのトルクメニスタンとはうって変わって戦車の残骸や建物の壁には銃痕の後が至る所で目に付いた。人々の表情も眼光がきつくなり、ギラついている。大地の乾きもよりいっそう厳しくなり、川があったと思われる跡が干からびていて今ではジープの通り道となっている。これはただ事じゃない、僕の直感が久々に騒ぎ出した。これからどうなるんだろうか、不安と冒険心が僕を興奮させていた。  つづく

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