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渡辺和洋さんと行く白神山地 前編

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2002/09/02

渡辺和洋さんと行く白神山地 前編

 



 僕がもっとも好きな場所のひとつ、それは白神山地。

  エベレストに登頂してから僕は何度か白神の地に足を踏み入れている。それまでの僕の登山は山頂を目指すスタイルで、半ば義務感にもにた感覚に背中を押されて上を目指していた。しかし、エベレストに登頂して、僕の中にある変化が・・・。

 そのことに気が付かせてくれたのがこの白神山地の森との出会いだった。
2001年7月に地元青森テレビのロケで、僕は初めて白神山地を訪れた。白神山地の上空をヘリコプターで飛んだりもした。途中、ヘリコプターのドアを開けたら、機内が甘い香りに包まれ驚いた。初めて嗅ぐブナの匂いだった。一時間ほど白神山地の上空を飛びまわったが、人工物がどこにも見当たらない。空から眺めながら、
「早く、この森に入りたい」
と、興奮していた。そして、又鬼(マタギ)の工藤光治さんとの出会い。取材前に
「マタギの方に白神山地を案内してもらいます」
と聞いたときは正直、不安を感じていた僕だった。
 僕の中でのマタギは「クマ猟」のイメージ。鋭い眼光で、ヒゲもじゃもじゃのガッチリした大男だと勝手に連想していた。

 しかし、初めて工藤さんにお会いしたときには、優しい目をしていて僕の不安は一瞬で払拭された。ちょうど工藤さんの目はヒマラヤに住むシェルパ達と同じ目をしていた。
「この人が本当にマタギ?」
と、思ったほどだ。

 それから工藤さんとは縁あって何度か白神山地を歩いた。工藤さんに案内される白神山地は「マタギ道」と呼ばれるまるでケモノ道のような草や木で多い茂ったところや沢を利用して移動する。驚いたことに工藤さんはそんな目印のない奥深い森の中を地図を持たずに自由に歩いている。聞けば
「地図なんか見ていたらクマを逃がす。一度見た風景は木の一本一本まで忘れない。それがマタギってもんだ」
との返事。森の中を自由に生きているマタギの姿が眩しく見えた。

 そんな白神山地に、何度か通うようになって、ある時ふと、気が付いた。
「そう言えば、山頂に立っていない! ずっと森や沢の中。それでいて心身満たされている。この包まれたような安心感はなんだろう・・・」
都市にいれば、色々と雑音も耳に入る。環境問題への取り組みの前に立ちはだかる人間社会の壁。理解されないことの戸惑い。時に見え隠れする迷い、自信のなさ、無意味なさ、無意味な防衛本能、逃げたいと思う気持ち。そんな時に僕を救ってくれたのが、白神山地の自然ときれいな目をした工藤さんの存在だった。

 今回の白神山地は、フジテレビの「晴れたらイイねッ!」のロケ。2001年11月に大坪千夏さんと八ヶ岳に登ってから、「屋久島」「富士山」と僕らの旅は続いてきた。そして、今回の白神山地。どこも僕にとっては特別な場所であり、その場に大坪千夏さんをはじめ素敵なスタッフの方々訪れることは、いろんな発見があり、楽しみであり、いつも癒されてきた。仕事のスタッフというよりも仲間と言ったほうがいいかもしれない。そして、前回の富士山からは新たに渡辺和洋アナウンサーが加わった。竹を割ったようなスカーッと気持ちのいい男だ。特に山の中で見せる彼の表情は生き生きしていて心底楽しんでいるのが、見ていてわかる。僕がまだ高校生の頃の登山では
「きっとこんな表情をしながら山に登っていたんだろうなー」
と、渡辺さんの表情を眺めていたときに思った。そして、僕もこの白神山地で初心を取り戻せる気がしていた・・・

後編につづく

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