2002年シシャパンマ

2002/09/07

決意あらたに

 


 9月7日、朝7時30分、シシャパンマBCへと向けて出発!

頭痛で寝れない夜を過ごしていただけに移動中はうとうとしてしまい、せっかく車窓から眺められる壮大なチベット高原の景色を楽しめなかったのが残念。途中、5000mの峠を越え、シシャパンマが見えるかな~と期待したが雲がかかっていてお預け。ニャラムを出発して3時間強でシシャパンマBC着。

 僕が想像していたBCとはあまりにもかけ離れていた。目の前には小川が流れ、羊の群れがその水を飲み、遠くには大きな湖があり、テント場も緑の草に覆われ、それはこれからヒマラヤ登山が始まろうとしているような緊張感のかけらも無く、まるでピクニックにでもきたような平和な空間であった。そして次に驚いたのがBCであるにも関わらずほとんどテントが張っていない。聞けば中国隊とスペイン隊の2隊だけが我々より先にBC入りいるとのこと。しかもその2隊ともすでに上部キャンプに向かっており、BCはほとんど無人状態。あの1000人前後いたチョモランマやサガルマータのBCとはえらい違いだ。僕はこの静かな美しいBCが大好きになった。

 午後5時過ぎ、さっきまで雲に覆われていたシシャパンマが突然その姿を現した。大きさに圧倒されながら一体全体、どこから登るんだとルートを探してみたが、その険しさと、いかにも雪崩れが発生しそうな地形にしばらく呆然としてしまった。そしてシシャパンマの回りには大きな山が無い為によりいっそうシシャパンマの巨大さが強調されている。独立峰のどうどうたる姿に胸が熱くなった。さて、どうなるのか、シシャパンマ登山。3年間のブランクがどのように影響するのか。1999年5月13日にエベレストに登頂した時のことを思い出そうとしても、結局は過去の出来事でしかない。終わってしまった冒険の事をまるで今の出来事のように振り返るなんてしょせん、無理な話しだ。シシャパンマを眺めながらまるで初めて8000m峰にチャレンジするかのような、気持ちのいい緊張感に包まれた。

 日本から体調不良に悩まされ、カトマンズ入りしてもそのまま変化もなく、3600mのニャラムで高度障害に苦しみ、どことなく気持ちが前向きになれなかった。「カキコミ広場」でもそんな僕に
「しっかりしろ!」
「隊長が弱気でどうする!」
と檄が飛んだ。でも、このBCでなにか吹っ切れたような気がする。挑戦するからにはもちろん、登頂を目指す。体はこれから順化活動を繰り返しながら整えていけばいい。それでも悪ければ悪いなりの登山のあり方があるはずだ。
「前へ前へ」
この気持ちさえ失わなければ僕にはやれる気がする。いつ終わるか分からない僕の登山人生。その瞬間が訪れ時に
「あの挑戦は素晴らしかった」
と心から思える登山をしたい。

 

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