5月5日、 7000 M地点で清掃活動を行うため、キャンプ1、キャンプ 2 を目指した。天候が回復し晴天が続くが、しかし今度は急激に温度が上昇したことによりセラックの崩壊(氷河上の土砂崩れのようなもの)があちらこちらで起きた。危険な氷河を通過するときは、万が一にそなえ被害を最小限に抑えるためにグループを 3 つに分け、一グループずつ通過した。 5 月 6 日、午後 4 時半、キャンプ 2 への荷揚げを終え、キャンプ 1 にシェルパ達が戻ってきたその瞬間に巨大なセラックがルート上で崩壊し、大雪崩が発生。なんと我々のシェルパ達が通過した直後に・・・。前日、私、平賀カメラマン、谷口けいさんもそこを通過していたが、通過しながら「ここはやばいなぁ ~ 」と話していた。それから立て続けに同じ場所でセラックの崩壊が繰り返された。

 すでにキャンプ 2 に上がっていたけいさんとシェルパ 2 名はキャンプ3(6750M)までルート工作し、私は破壊されたルートを確認した後にベースキャンプに戻りサーダー(シェルパ頭)に指示をだしながら、今後の打ち合わせを行った。二日ぶりにベースキャンプに戻ってみると、氷河が溶け出し滝のように水が流れていた。小西さんは「前に来たときは 5 月下旬になってようやくベースキャンプの近くから水の音がチョロチョロ聞こえる程度だったが、これは酷い。 5 月上旬にして完全に 5 月下旬、 6 月上旬の温度になっている」と驚いていたが、私もヒマラヤに 30 回以上訪れているが、これほど温暖化の影響を深刻に感じたことは初めて。先週までは新雪による雪崩だったが、今週になってからは高温によるセラックの崩壊と雪崩。雪が溶け出しグチョグチョになっているだけに雪崩の音が重い。

 5月9日、上部キャンプに上がっていたシェルパ達、谷口けいさん、小西さんがベースキャンプに集合し、今度の予定について話し合った。 15 人を抱えた清掃登山隊。清掃活動ではこれ以上のリスクを背負うわけにはいかない。私はメンバーやシェルパ達にベースキャンプから上部での清掃活動を断念、終了することを伝えた。残念ではあるが、判断を間違えると取り返しがつかなくなる。清掃隊は明日からベースキャンプ付近での清掃活動を行う。

 そして次に野口隊のもう1つの目標であるマナスル峰登頂は少数精鋭で行う予定。 14 座無酸素登頂を目指している小西浩文さんは 5 月中下旬に山頂を目指す。そして我が隊のホープである谷口けいさんも状況によってはシェルパ 2 名と山頂アタックを賭ける。いずれにしても、安全第一、万全の状態になって初めて山頂を目指す。残り約 2 週間、清掃活動、そして登山活動、気を引き締めて行います。

 

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