summit_keiチーム
終わった。終わっちゃった。
一人ごろりと横たわっていると、頭の中にぐるぐると想いが巡る。
8000mオーバーでの酸素。酸素、無酸素。
なんで私、酸素吸っちゃったんだろ。
なんで、って寒かったから。強い意志が無かったから。
大切な人たちに守られ過ぎていたから。
ピピン(ダイバー)はオードリーの挑戦を100%支持したがゆえにオードリーの命を亡くしてしまったけどあんなに私の無酸素を提案していたペンバは私を守りすぎて酸素を与えてくれちゃった。
あーあ、私の意志の弱さ。
一方で、そんなこと別にどうだっていいや、って思う。
有酸素だろうが無酸素だろうが、大した問題じゃないって気分なんだ。
そんなことよりも、大切な人たちと過ごした時間と空間のほうが重要なんだって。
山の高さも、空気の薄さも、登れたか登れないか、どうやって登ったかも、そんなこと他人には結局分からないことで、重要なのはそこに愛があるっていうことなんだと。
誰と登ったか、
そこでどんな時を過ごしたか、
何を見たか、
何を聞いて何を感じたか、
それはそこにいた人にしか分かり得ない事で、
生も死も、苦しみも悲しみも喜びも、
それは全て自分のものでしかない。
きっと二度と来ないエベレスト、今年のチョモランマにはいろんな隊がいて
いろんな人間模様と登攀スタイルがあったけど
私は野口隊のメンバーであったことを嬉しく思うし、
大好きな人達と登れたことに感謝したい。
一生に一度きりの体験だから。
この二ヶ月間、限りなくあふれ出てきた笑いと、いっぱいの愛情に、
心からありがとうと言いたい。
楽しくて仕方の無かった素敵な日々が暮れてゆく。
日本に帰ったらきっとまた一人では眠れない。
あーあ、帰りたくないなー・・・
2007年5月25日 満開のジャカランタが眼に眩しいカトマンズから 谷口けい