2009年マナスル清掃登山 , ヒマラヤ

2009/07/04

ヒマラヤを想う

 久々のブログ。しばしさぼっちゃった・・・。

 ヒマラヤにいた時の方が遥かに厳しい環境だったのにちゃんと更新していました。ただ、僕からするとヒマラヤでの生活の方が楽なのか、肉体は別として少なくとも精神的には健康であります。ヒマラヤでの生活は確かに厳しいけれど、要はいかに生き延びるか、日々を精一杯生きているだけで、世の中の祭りごとなどうでもいいわけです。

 ベースキャンプにはパソコンと通信機材を持ち込んでいるので日本の情報も入ってきますが、誰々が裸で公園を走って逮捕されたとか、小沢代表が辞任したとか、まあ~ハッキリ言ってどうでもいいようなニュースばかりで特にヒマラヤなんかにいますと、「日頃の情報がいかにもくだらないなぁ~」と、最近では何処ぞの知事が「私を総裁候補としてお戦いになるお覚悟はありますか」と、最初はギャグがと笑って見ていましたが、次の国政選挙に求められている本質論から大きく外れた外野席の方ばかりに注目が集まり、これまたどうでもいい。自民党と民主党のやり合いも政策で争うものではなく、互いのスキャンダルを追及することに終始しており、これまたいかにも程度が低く、政治に無関心になってしまう若者の気持ちが少しだけ理解できる。分かる一方、このままでは日本丸は傾き海底に沈んでしまうといった危機をひしひしと感じるものです。

 日々、我々はどうでもいいような情報に振り回されていますが、しばらく日本にいるとそんな事にも気がつかなくなる。無意識の内に毒されているのかもしれませんが、ヒマラヤ生活では余裕がないせいか無意味な情報なんかに構っていられない。その分だけ精神的には健康なのかもしれない。

 マナスル峰から帰国してひと月が過ぎましたが、もうすでにヒマラヤが恋しい。日々、日本をまるで旅芸者の如く渡り歩いていますが、心の中はヒマラヤ。日本が好きだと自負していながらなんとも自己矛盾を抱えていますが、どうであれヒマラヤに帰りたい。

 僕はどうも言葉ばかりの世界が苦手。政治家も評論家も、コメンテーターも、キャスターもその多くが言葉の世界。抽象的で幼稚な表現かもしれないが、多くの人はカッコいい言葉を並べるものの命を賭けようとしない。

 あの生きるか死ぬかの世界、雪崩に脅えながらも「一歩一歩、前へ前へ」と進まなければならない氷河、一日一日を生き延びられただけで心から感謝するあの世界が恋しい。

 マナスル峰遠征直前、相方の平賀カメラマンに「今回は流れが悪い。厳しい遠征になるだろう。やられるとしたら雪崩だ。その時は一緒に流されるだろう。もしそうなれば申し訳ないが俺と一緒に死んでもらう事になる。それでも良いか」と、しばし続いた沈黙の後、「分かりました。その時は一緒に死にましょう」と小さな声であったが、しかし、覚悟を決めた声であった。あの言葉に偽りはなかった。なにが正しいのか正しくないのか私には分からないが、幸か不幸か、このような生き方しかできない。

 考えてみたら自分の夢の為に命を賭けるほど贅沢な事はない。自身の為よりも国なり社会のために命を賭ける方がよっぽど尊いのだろう。まあ~そんな事を考えてダラダラとまとまりのない原稿を書いているうちに名古屋が近づいてきました。

 
 さてと、今日、明日と愛知県で講演。今日は講演会場でどのような出会いがあるのか、楽しみです。それでは頑張ってきます!

2009年7月4日 新幹線の中にて 野口健

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