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2012年アフリカ , 2012年アフリカ遠征 , アフリカ

マサイマラの獣医 滝田明日香さん

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2012/09/01

マサイマラの獣医 滝田明日香さん

ソトコト(2011年2月号)に掲載された、マサイマラで働いている滝田明日香さんとの対談です。
ぜひ、ご覧ください。


昨年夏、ウガンダ、ケニア、タンザニアと1か月半に及ぶ旅をした。その旅で多くの人たちとの出会いがあったが、特にうれしかったのが日本人の活躍だった。彼らの多くは地道にコツコ
ツと、決して目立つわけではないが、しかし、現場の第一線で地元の人々と一緒になって汗をかいていた。
まず紹介したいのは、マサイマラ国立保護区で密猟者相手に果敢に挑んでいる一人の日本人女性・滝田明日香さん(35歳)だ。彼女とは5年前に『ソトコト』のアフリカ特集の時にマサイマラに訪れた際に出会ったことがある。当時、彼女はケニア大学で獣医学を学ぶ留学生。「将来は主に野生動物の保護をやりたい」と目をキラキラさせていたのが印象的だった。その彼女と5年ぶりに再会を果たしたのだが、その場所はマサイマラ国立保護区とマラトライアングルの境目。360度大草原、そしてゲートの小さな小屋が一軒あるだけのその場所が彼女との待ち合わせ場所だった。予定時間を15分過ぎ、本当にここなのかなぁと不安になりながらも、こんな大自然のド真ん中で時計を気にしながら待ち合わせをしていること自体がなんとも滑稽であり、いかにも日本人なのかなぁと、そんなことをぼんやりと考えているうちに、一本道の彼方から砂煙が立ち上るのを発見。目を凝らして眺めていると一台のディフェンダー(ランドローバー)がガアーと音を立てながらやってきた。そしてそのディフェンダーからサングラスにアーミースタイルの女性が飛び降りてくるかのような勢いで出てきたと思いきや、「野口さん、元気ですか。明日香です!」。まるで映画のシーンのような格好よさにしばしキョトンと見惚れてしまった。
 
5年前から彼女はバシッと竹を割ったように男らしい? いやいや、男以上にたくましかった(最近では男のほうがはるかに女性よりも女々しいが)が、それでも5年ぶりに会う彼女は明らかにあの頃の彼女とは違い、何か確かなものをつかんだような、そして使命感に満ち溢れたその堂々たるオーラ
に、お話を聞く前からこの5年間の活躍を感じ取っていた。

DSC_0093.JPG
パトロールカーで待機する追跡犬とハンドラー

「野口さん、私はね、野生動物の獣医になりたかった。でもね、野生動物の獣医は政府の獣医さんじゃなきゃできないんです。つまり公務員です。外国人が公務員になることは難しいので。でもどうしてもマサイマラで仕事をしたくてマラコンサーバンシー(保護区管理施設・非利益組織)にボランティアさせてほしいとお願いしたんです。
そうしたら、『いいけれど、生活費は自分で用意してね』と言われて。でも1年間、ボランティアのような形で野生動物に病気がうつらないように犬にワクチンを打ったりしていました。そして1年後に、『こんなに頑張っているのだから入れてくれない?』とお願いして正式に採用されました。所属しているアジア人は私だけです。アジアンパワー1人で頑張っていますよ!」
と、実に逞しい。彼女が所属しているマラコンサーバンシーについて簡単に説明するとマサイマラ国立保護区の一部の面積約510平方キロメートルの「マラトライアングル」と呼ばれている動物保護区のパトロールを行っている非利益団体。以前は密猟天国となり無法地帯と化していたマサイマラに危機感を募らせた管轄のトランスマラ州政府が野生動物保護のスペシャリストであるマラコンサーバンシーに管理を委託。
彼らは独自のレンジャーを持ち、観光客や密猟者から野生動物を守るために日々パトロールを行っている。マラコンサーバンシーが管理を行う前は密猟者たちにより年間2000頭以上のレイヨウ類が殺され食用として市場に売られていたとのこと。設立して10年。レンジャー達は1,521人の密猟者を逮捕、10,500個のワイヤー罠の回収を行ってきた。

DSC_0860.JPG追跡訓練のひと時

DSCF7093.JPGマラ川の向こう岸で密猟者を逮捕した後、川を渡ってマラ・トライアングルに帰って来るレンジャー、逮捕された密猟者と追跡犬たち。

こうして明日香さんは野生動物の獣医にはなれなかったものの、念願のマサイマラで働く事となる。しかし、2008年の大統領選挙でマサイマラは大きなピンチを迎える事になる。選挙後、政局で混乱し1000人以上の死者がでた。家などを焼かれた人たちは50万人以上。ナイロビのスラム街ではパンガ(山刀)で群衆が人を切り刻んでいたとの情報も。ケニアの情勢悪化は国際的なニュースとなり観光客は激減。公園内のロッジの多くが閉鎖に追い込まれてしまった。マラコンサーバンシーは観光客の入園料のみで運営されていたので、資金難に陥りレンジャーの解雇まで検討された。レンジャーが解雇されれば一番喜ぶのが密猟者。

44983_1343005387324_1596910119_2455137_3915014_n.jpgパトロールカーの中でレンジャーたちと。

密猟者の多くはタンザニアから越境してやってくる。また近年は中国資本が集中するアフリカで再び頭を悩ませているのが象牙を目的とした密猟が復活しているとのこと。レンジャーを失えば再び密猟天国になってしまうと、明日香さんはインターネット等で寄付金を呼びかけた。「MOTTAINAIブログ」や村上龍氏のJMM,坂本龍一氏のメールマガジンでも紹介され、日本で集まった寄付金は2年間で1500万円。この寄付金はレンジャーの人件費に充てられ多くのレンジャー達が解雇を免れたのだ。


そして明日香さんが次に目をつけたのが、追跡犬の導入。2009年6月に導入された追跡犬ですが、アメリカでは主に脱獄犯の追跡に活躍している。追跡犬を利用するのは嗅覚によりブッシュに隠れ潜んでいた密猟者を探し出すこと。アメリカのボランティア団体と連携した。犬たちはコロラド州で警察による訓練を7ヶ月間受けた後に、今度は実際にマサイマラの大草原で訓練を受けるのだが、訓練中に突然ゾウやカバ、ライオンにチーター達の出現にアメリカからやってきたワンちゃんたちはパニックを起こす。そりゃそうだろう。パニックを起こさない方が変でしょうに。それでも毎日のように明日香さんはその追跡犬を連れては訓練に励んでいる。実際に7月には密猟者逮捕に貢献している。3匹いる追跡犬も1匹はアフリカの世界に適応できず2匹で活動を行っているが、今後、この追跡犬をさらに増やしたいと明日香さんは話す。3匹のうち1匹が先日。ツエツエバエからうつる「トリパノソーマ」(人間の眠り病)とダニからうつる「バベシア病」で死んでしまった。現地の環境や動物に慣れる以外にも、風土病という大きなハードルが道をふさいでいるが、この問題も今後は風土病に強い現地のマサイ犬の血を取り入れていくなどをして改良していかないといけない。「そうですね、訓練された犬が8頭はほしい。子犬のうちから慣らして慣らして慣らさないと、それでもアフリカは過激なファクターがあるので精神的につぶれたら駄目だし、訓練してアフリカで通用する立派な追跡犬を育てるのは時間とコストはかかるし、それでも私はやりたいのです」とキッパリ。明日香さんの眼差しには迷いはなかった。

DSC_0939.JPG追跡開始する直前

明日香さんのこの5年間の出来事1つ1つを聞きながら、再会した時に感じられたあの堂々たる姿に「こういう事だったんだ」と素直に納得させられていた。今後も彼女の活躍に期待したい。
(ソトコト2011年2月号)

マラコンサーバンシーへの寄附のお願い
マサイマラの密猟対策のための追跡犬ユニットでは、壮大なサバンナをレンジャーと追跡犬ユニットがより広くパトロールするためのパトロールカーを購入する資金を集めています。
ぜひご協力ください。

東京三菱UFJ銀行 大森支店 普通口座 口座番号1299787
「マサイマラ巡回家畜診療プロジェクト」
郵便振替口座 口座番号 00100-0-667889
「マサイマラ巡回家畜診療プロジェクト」

滝田明日香さん 公式HP http://www.asukafrica.com/

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