クンデ村の土石流

2008 年がスタート。今日はクムジュン村での清掃活動を予定していたが、村人から「今日は人が集まらない。アイランドピークから戻ってきたらやろう」と言われてしまった。そりゃそうか、元日ぐらいゆっくりさせてほしいわな。したがってアイランドピークから戻ってから村人とのクムジュン清掃を行うこととなりました。

　高所順応を兼ねてクムジュン村や隣のクンデ村を散歩した。クンデ村で驚いたのが大規模な土石流の跡。朝日新聞でも報じられていたが、 7 月 10 日にクンデ村で土石流が発生。奇跡的に土砂は人家の間を抜けて流れ人的被害はなかったが、田畑などが流された。村人によると裏山のクンビィラから水が流れてきて次に土砂が押し寄せてきたとのこと。

クンデ土砂崩れの現場

クムジュン村のダワさんは「クンデでの土砂崩れは 60 年ぶり。昨年の夏は雨がたくさん降った。雨で山が緩んだのではないか。ここだけではなく、エベレスト街道の上の村では橋が流された。暖かくなってきて雨の量が増えた。」と温暖化の影響ではないか危惧していた。昨年の夏にダワさんと偶然にも八ヶ岳で出会っていたが、一緒に泊まった山小屋（オーレン小屋）で気候変動によるヒマラヤの天候の変化について話し合っていた。ダワさんは「いつからかヒマラヤの天気はおかしい。村の若い人はみんな温暖化の影響だと言っている」としきりに話していた。

対照的だったのが老婆のミンマドマさんは「神様の罰があたったんだよ。私の家は一階部分にまで土砂が入り込んできた。見てよ！」と家に案内してくれた。「夜に突然、水と土砂が流れてきてすぐに神様にお祈りしたよ。私はなにも悪い事していないよ！私の家だけは守ってよ！」と叫んでいたそうな。彼女に「何故に神様が怒ったの？」と聞いたら「それは分らないけれど、きっとみんなのお祈りが足りないんだよ。それにゴミを集めては燃やすようになったでしょ。あの煙の臭いに神様が怒ったのよ」と。

ミンマ・ドマ　クンデの老婆

以前はゴミを燃やさなかったシェルパの村々も最近では急激にトレッカーなどの観光客が増え生活様式が大きく変化しゴミ問題が深刻化し最近になって焼却炉を作りゴミを燃やすようになった。

しかし、村の年配層から「ヒマラヤでゴミを燃やすのは神様に失礼だ！」と反対の声があった。それに対して若者は「まずはゴミ問題を解決しなければならない。それに神様がゴミを燃やして怒るとは思わない。逆にゴミが散乱しているほうが怒るでしょう」と意見が分かれていた。

朝日新聞では「 7 月 10 日深夜に集中豪雨があったことが、事前に調べた衛星画像と現地の観測データ両方で確認された。地球温暖化の影響は、豪雨や豪雪など極端な気象現象に強くでる」と名古屋大学の安成教授のコメントが紹介されていた。

神様のお怒りか、それとも気候変動の影響か、村人の戸惑いはまだまだ続きそうだ。

明日はパンボテェ村を目指します。