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「融解するヒマラヤ氷河対策に向けて森喜朗元総理、鴨下環境大臣との会談 」

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 3月5日、ツバルに向かう直前、私は鴨下環境大臣、森喜朗元首相と会談を行いました。テーマはヒマラヤの氷河における融解対策です。

 気候変動(いわゆる地球温暖化)の影響によるヒマラヤの氷河が急激に融解し氷河湖が拡大しヒマラヤ流域国の各地で洪水の被害が相次いでいる事実はすでにこのブログ、また野口健公式ホームページでも度々紹介してきました。UNEP(国連環境計画)およびICIMOD(国際総合山岳開発センター)の調査によると、現在ヒマラヤ地域(ネパール・ブータン・インド・中国)には1万5千個の氷河と9千個の氷河湖があると言われ、また、その中でも最低200個の氷河湖が近々、決壊するであろうと報告されている。
  
 このまま地球温暖化が進めば2035年にはヒマラヤ地域の全ての氷河がなくなり、消滅した後に待ち構えているのは既にその被害が深刻となっているアフガニスタンのような砂漠化現象である。そうなればヒマラヤ流域国で生活している13億人に被害が出る。
 
 昨年の12月に開催された「第1回アジア・太平洋水サミット」において「ヒマラヤ地域における氷河の融解」をテーマにしたセッションの実現に向け同サミットの運営委員会として邁進したのもなんとか氷河湖決壊対策への糸口になるかと期待し熱望したのも、もう残された時間が少ないといった危機感からであった。
 
  しかし、「第1回アジア・太平洋水サミット」ではヒマラヤの氷河の融解に対する懸念は各国代表から発せられたものの我が国、日本から具体的な解決、取り組みなどの具体策の発表がなされないままシャンシャンと閉会してしまった。とても残念であり、直後の記者会見では思わず動かなかった日本政府に対して愚痴ってしまったが、しかし、冷静に考えてみればそれだけヒマラヤの氷河の融解が及ぼす被害がまだ一般的に知れ渡っていないということだ。ヒマラヤの現場に訪れた事のない多くの関係者に、ヒマラヤに通い続けている私が感じる「現場での危機感を同じように分かってくれ!」というのが、そもそも無理なのだ。
 
  しっかりと伝わるまでにはそれなりに時間とエネルギーが必要だ。せっかちに「なぜ分かってくれないのか!」といきり立ったところで打開策に向けて一歩でも前へ前へと進まなければなんら意味がない。

 まずは鴨下環境大臣との面会。昨年の12月6日に地球温暖化による海面上昇の影響を受ける南太平洋の島国、ツバルのイエレミア首相との会談で福田首相は「日本政府は海面上昇の原因など地球温暖化の影響を調べるために調査団を派遣する」と伝え、平成20年1月1日〜5日に鴨下環境大臣をツバルに派遣。

 ツバルに訪れた鴨下大臣はイエレミア首相に福田総理の親書を手渡し、気候変動についての意見交換や浸食が進んだ現場の視察を行った。

 鴨下大臣に「今日からツバルに出かけてきます。気候変動の影響で一国が海に沈み消えるかもしれません。また、同様にヒマラヤの氷河が急激に溶けだしヒマラヤ流域国では洪水などの水害に苦しめられています。日本にいてはなかなか感じる事ができない危機感が現場にはあります」とお伝えしたら「私もツバルに訪れてみて、温室効果ガスを削減していくといった緩和策や削減対策も大事だが、同時に開発途上国など地球温暖化に対して脆弱な地域に支援しなければならないと感じてきました。日本が単独で、あるいはG8でどのように合意形成し、資金メカニズム、技術移転、適応などあらゆる面でどのような支援ができるのか、環境省とJICAは2月と3月に調査団を派遣しています。そして野口さんのご指摘のヒマラヤの氷河湖の決壊による深刻な被害に私も懸念しています」と鴨下環境大臣。

鴨下環境大臣と
 
「鴨下大臣、福田総理は1月の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)にて5年間で約一兆円規模の新たな資金メカニズムの構築を打ち出しました。ツバルやアフリカの干ばつ同様に融解する氷河対策もこの枠組みの中に含めて頂けないものでしょうか」とお願いしましたら「私も日本政府がヒマラヤの氷河対策に乗り出すことになれば世界に向けて大きなメッセージになると感じています。洞爺湖サミットに向けて日本はすぐにでもアクションを起こさなければならない。急ぎましょう!」と力強い嬉しいお言葉であった。

  ツバルから帰国したら再び鴨下大臣と会談を行うことになりました。ツバルのような現場に訪れた事のある鴨下大臣には現場感覚がおありでした。環境大臣に最も求められるのがこの現場感覚だと私は思う。

 そして次に会談を行ったのは森喜朗元総理。森元総理は「NPO法人日本水フォーラム会長」、「第1回アジア・太平洋水サミット運営委員長」そして「アジア・太平洋水フォーラム会長」を務められており、水問題には精通されている。先日のエチオピアでの第十回AU総会で森元総理は「ヒマラヤの氷が溶けはじめ、下へ下へと流れ出ており、ネパールやブータンといったヒマラヤの麓の国々は、氷河湖の決壊による大洪水の可能性に直面しています」と発言されている。
 
  その森元総理に「ヒマラヤの氷河融解問題は少しずつですが、一般的に知れるようになりつつありますが、実際に決壊対策に向けた資金が決まっているわけではありません。日本政府がツバルに引き続き、ヒマラヤの氷河湖対策に具体的に取り組むことで世界に日本の気候変動に対する姿勢を訴えることができるかと思います。また今後も日本水フォーラムと対策を協議し、ヒマラヤ地域の担当大臣、有識者、専門機関との会議を重ねてまいりたいです。なにとぞ後押しをお願いします」と陳情してきました。

 森元総理は「水サミットの時にあなたのスピーチを聞きましたが、ヒマラヤの氷河がそんなことになっているなんて、知らなかったねぇ〜。私が総理の時に、橋本先生(橋本龍太郎元総理)から一度ネパールに行ってほしいと言われてね、訪れたが、最終日にカトマンズからもヒマラヤが見えてね、夕方だったからヒマラヤが夕日にピンクに染まっていて美しかった。あの光景は今でも目に焼き付いているよ。あの美しいヒマラヤが悲鳴を上げているんだねぇ〜。私も次の国際会議で再びヒマラヤの氷河問題をとりあげます。また私にも色々と考えがあります。ところで、野口さんの年はいくつ?」「えっ、まだ34歳ですか」「いやいや、まだお若いんだね〜」と・・・。驚かれていました。どうやら私は老けて見えるようです。森元総理は見た目通り?とても気さくな方でした。

森元総理と

 2000年に現職の日本総理として初めてネパール入りしたのが森元総理。パレード中にネパールの子どもたちが沿道で日の丸を振っている姿に感激し車を止めて握手し時にその子どもを抱きかかえたそうな。警備上、SPが大そう慌てたそうだが、それでも森元総理は何度も車から降りては子どもたちと接していたとネパールのマスコミ関係者が話していた。おかげで今でもネパール人から「日本の総理大臣とネパール人は友達だ」と親近感を口にする言葉をよく耳にする。水フォーラム、そしてネパールと森元総理とは縁があります。これからも森元総理からアドバイスを頂きたい。

 ふと眼を閉じると氷河湖決壊に怯えるシェルパ達の姿が見えてくる。いつ決壊するか分からない氷河湖。待ったなしだ。地球温暖化への対策も大切だが、その間にいくつもの氷河湖が決壊し続けるだろう。地球温暖化対策と同時に氷河湖の水を抜くなど決壊対策を行わなければ新たな犠牲者がでる。日本でG8が開催されるのは8年に1度。このチャンスを逃してはならない。官邸にこの思い、声が届くのだろうか。いつの日か、福田総理に直接お会いし、お話しさせて頂けるチャンスがあればと、そんな勝手な思いを抱きながらツバルに向けて日本を離れた。6年ぶりに訪れるツバル。

  イエレミア・ツバル首相と会談を行う予定ですが、地球温暖化が引き起こしている問題は山も海も同じ。それらの声を1つに温室効果ガス主要排出国に訴えていきたい。

2008年3月5日、機内にて 野口健