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八ヶ岳で新たな挑戦

 
  佐渡島から戻り連休を頂いた。もちろん休みの日は山登り。しかし、佐渡島でのどろんこ相撲で鼻からバイ菌が入ったのか、頭痛と左目の下の奥が痛み抗生物質を飲み午前中は横になって過ごした。蓄膿症は一度やられると手術しない限り完治しない。くせになり、すぐに繰り返してしまうもの。また東京は豪雨と雷に襲われ、この天候で山登りはしんどいと予定していた燕黒岳登山を延期した。

 しかし、午後になりせっかくの休みに一人東京で過ごすのはあまりももったいないと、どこか近場でいいから山に登りたくなり、静岡在住の山岳部の後輩である大石明宏氏に連絡し「おい!今夜から山に入らないか!」と突然の連絡に「いいですよ!明日の仕事は休みますよ!」と、さすがは後輩、頼りになる。彼は学生時代にヒマラヤの8000M級の山を無酸素登頂した男で、もっとも優秀な後輩だった。「大石、八ヶ岳でも行かないか!美濃戸口から赤岳から横岳、そして硫黄岳を経由してまた美濃戸に降りよう。どうかな、ざっと10時間ぐらいでやれるかな?」と、大石は「野口さんと二人で一気に歩き続ければ楽勝ですよ!」と、それで決定。

 その日、大石は仕事をしていたので、先に小淵沢に向かい駅近くのすし屋で待ち合わせ。午後9時半ごろ合流し美濃戸登山道入口にある八ヶ岳山荘に泊まる。9月1日、午前7時、美濃戸口を出発。9時過ぎに行者小屋に到着。ここでうどんを食べ赤岳山頂へ。12時過ぎ、霧に覆われた赤岳に登頂!真っ白くガスった山頂からの景色はなかったが、最後に赤岳に登ったのはおそらく学生時代。あまりにも懐かしく、また一緒だったのが学生時代の後輩だから登りながら昔話に花が咲いた。互いにザイルを結びあい命を預け合っただけに、やはり山岳部の仲間は特別だ。

  赤岳山頂で一休みし横岳山頂を目指して稜線を進む。ここからは岩稜(岩の稜線)を慎重に進み、ちょっとした心地いい緊張感?を楽しんだ。晴れていたら富士山まで見渡せるのになぁ〜とちょっぴり残念であり、ただこの夏は嫌なほど富士山を見たから別にいいか!とそんな事よりも都会を離れ人気が少ない八ヶ岳の稜線にはなんともホッと心が安らいでいた。8月の富士山は人が多すぎた。

 なにしろ富士山では登っているのか、それともサイン会、写真撮影会の会場にいるのか分からないほど、まるで雪崩の如く人々の渦に襲われていた。サインや写真撮影に応じるのも、役割なのかもしれない。確かに有難いことです。ただ日常から解放されるために訪れる山中ではなんとかならないものかと悩んでしまう。だからといって断ると「野口健は偉そうだ!」となるわけでここが実に難しい。したがってけっして天候には恵まれなかったが、そのおかげで登山者が少なく実にリラックスしていた。


山頂にて チュ!

大石さんと

 横岳に登頂し、さらに稜線をつめ硫黄岳山頂へ。硫黄岳山頂から赤岳鉱泉小屋に下り、出発地点でありまたゴールの美濃戸口へ。徒歩時間ざっと11時間30分。よく歩きました。バテバテになるほど疲れ果てはしなかったが、大石が「野口さん、普通は一泊二日のコースですよ。疲れていないんですか」の言葉に「この程度で疲れる?なんで?そんなわけないだろう」とついついムキになって反論していたら、格好悪い事に、その際中に足がガクッとなり転びそうになった。しまったと振り向いたら大石がニヤッと笑い「あれっ!野口さん、足にきていますねぇ〜」と。

 こうなったら引くに引けなくなり「おい!大石、次回は南八ヶ岳全山を20時間以内に縦走しよう。編笠山から権現岳、そしてキレットを超え、赤岳、横岳、硫黄岳、天狗岳、そして渋の湯まで一気に歩き続けよう!」と提案してしまった。さすがに大石も「まじですか!ちょっときつ過ぎませんか!通常は二泊三日のコースじゃないですか!」と「いやいや午前2時に編笠山登山をスタートすれば、夜の10時までには渋の湯に着けるだろう。なぁ〜にヒマラヤに比べたら酸素が濃いだろう。酸素ボンベがいらないんだから。酸素が無くなることを気にしなくていいんだぞ。天候に恵まれたら、やれないことはない」と押し切ってきまった。大石もやれやれ困った、という顔をしていたが、まんざらでもないようで、最後は強引に握手して「一緒にやろうぜ!」と相成ったわけです。

 決行日を9月下旬にし、そのプロジェクトに向けてトレーニングを開始することとなった。大石とまるで学生時代のように、再び共に挑戦することが出来る。その機会に感謝し、また言い出しっぺの私が先にくたばるわけにはいかないと、気持ちをぐっと引き締めその日まで精いっぱい体を鍛えようと、気合いをいれていた。果たしてどうなることやら・・・。それにしても最近、山登りが楽しくて仕方がない。仕事抜きで山に登るとこんなに楽しいですね。忘れていたなぁ〜。カメラを意識しないでいいんだぁ、ギャグの1つも言わなくていいんだと。なんだか最近、山にハマってきました。

 大石が「野口さん、若返っていますよ。エベレストの登った頃から山登りに関してもどこかで辛そうでしたが、今日は生き生きしていましたよ」の一言に自分の居場所は山でしかないんだと再発見していた。そんな自分に驚いている今日この頃です。

9月1日 八ヶ岳から戻る 野口健