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「ツラギ氷河湖へ」


ピサンピーク登頂後、次の目標はツラギ氷河湖。ネパールでは数十年前から氷河湖決壊洪水が記録されているが、その中でもネパールの水・エネルギー研究局は、イムジャ湖、ディグ・ツォ湖、ロウアー・バルン湖、ツォ・ロルパ湖、ツラギ湖の5つの氷河湖は潜在的な決壊の危険性があると報告した。



ツラギ氷河湖全容

 

今までロウアー・バルン湖、ツォ・ロルパ湖、イムジャ湖には訪れ写真や映像で記録しICIMOD(国際総合山岳開発センター)や日本の氷河湖研究者に提供してきました。また、2008年12月に開催された第1回アジア・太平洋水サミットで気候変動によって急激に融解する氷河により氷河湖が拡大し決壊している事実を発表し国際社会が決壊防止に向けて取り組むように訴えた。

ヘリから空撮したツラギ氷河湖

ツラギ氷河とツラギ氷河湖の境

残る氷河湖はディグ・ツォ湖とツラギ氷河湖。機会を見つけて訪れなければと思い、今回はツラギ氷河湖へと向かった。4月24日、4146Mのツラギ氷河湖に到着。山奥にありなかなかハードなコース故、空撮による映像資料はあるものの地上から撮影した細部映像、写真資料は少なくそれならば訪れる価値もあるだろうと出かけてみたが、いやはや、6000M峰2峰登った身には堪える急坂の連続。昨年、ICIMODが3泊5日かけた行程を我々は1泊2日で行かなければならず、またピサンピーク後から天候が崩れ毎日、午後になる決まって雷に雨にミゾレ。ずぶ濡れになりながらの登山に滅入ったが、しかし、その雨のお陰でシャクナゲが綺麗に咲き、また名前は分からないけれどそれ以外の花もそれはそれは見事であの真っ白な氷河の世界とまた異なりなんとも癒される思いであった。

シャクナゲの谷を歩く

ツラギ氷河湖はこの17年で22パーセント拡大したとのこと。長さは2キロから2・4キロへ。

温暖化の影響で「ヒマラヤの氷河が2035年には消失する」といった情報がIPCCの4次報告書に載り話題となったが、その後にそのデーターに誤りがあったとIPCCが表明。この騒動により「ヒマラヤの氷河は融解していない」「地球温暖化はおこっていない」などといった声が目立つようになったが、現場では確実に氷河は融解し続けている。名古屋大学の藤田准教授も「この3年間の現地調査の結果、小規模の氷河湖は確かに後退しており、35年までに消失するのも出てくるだろう。」(日経エコロミー)とご指摘されている。ICIMODも同様の意見を持っており、これからも氷河湖問題に対し調査、または決壊対策に対しアクションを起こすべきだろう。

ツラギ氷河湖左が1990年・右が2007年 宇宙航空研究開発機構

学者には学者の役割があり、登山家にもまた登山家の役割がある。大切な事は多くの関係者を含め、この問題が忘れ去られ、取り残されないようにすること。決壊し多くの犠牲者が出てからでは遅い。カトマンズに戻ったら我々は日本に帰らずバングラディシュに向かう。以前、訪れたハシャリ村に再訪するが、あれから2年。村人との再会は楽しみだが、その半面、洪水の被害がさらに悪化していないかと不安でもある。

苔が美しい

地球温暖化の問題は確かに複雑で様々な意見が出るのも当然で、また一筋縄には行かないが諦めたら終わってしまう。まだまだ現場から訴え続けなければならない。

2007年7月5日〜9日バングラディッシュ前編
2007年7月5日〜9日バングラディッシュ後編
2008年5月22日「動く島・ハティア 〜バングラディシュ 洪水と共に生きる人々〜」
「2008年5月23日変わり果てたハシャリ村 〜バングラデシュ・洪水と生きる人々〜」

2010年4月25日 野口健