あの突然の気絶から3カ月、私は再び凍て付く厳冬季のロシアの地に戻ってきた。エルブルース、私を死の縁まで追いやった山。この3カ月間、一日たりとも私の脳裏から離れたことがない。私だけではない。一緒に挑戦した山岳部の及川にも多大な迷惑をかけた。あの出来事さえ起きなけれぱ、彼はエルブルースに登頂していただろう。それなのに私には嫌な顔一つしなかった。自分の山に対する誤った気持ちが敗退につながった。今度こそ、人に迷惑をかけてはいけない。
12月中旬、及川と私は再ぴロシアヘと渡った。前回と違い、季節は厳冬季。モスクワでさえマイナス12度以下、風が吹けばたちまち衣服が凍りつく。モスクワでさえこれほど厳しい状況の中、果たしてエルブルース登頂など可能なのか。及川と私はなんとなく不安を覚えた。

エルブルースに登頂。中央が野口、右が及川、左がガイド |
2日間、モスクワで滞在しエルブルースの麓アザウの村へと向かった。命の恩人であるギーナと合流し、再会を喜びあった。ギーナに「この冬の時期のエルブルース登山は可能か」と聞くと、「天候さえ良ければ大丈夫だと思う。天候が良けれぱね」。天候の事を強調していた。冬のロシアか…。大丈夫かな。
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