ひと 野口健さん
世界7大陸の最高峰制覇の最年少記録を更新
◇天候急変で1時間遅れていれば失敗だった

米国ボストン生まれ。父親は外交官で、海外で少年時代を過ごす。亜細亜大4年。
25歳 |
16歳の1989年8月、モンブランに登頂して以来、登山歴10年。世界7大陸最高峰征服という夢の最後に残ったエベレスト(8848メートル)への挑戦は“三度目の正直”だった。97年5月の初挑戦は体力低下で断念。98年10月の2度目の挑戦は頂上を目前にしながら天候急変で撤退。5月13日、ついに地球の頂点をつかんだ。「前半は体調が良くなく、きつかった。天候も急変して1時間遅れていれば失敗だった」と振り返る。
英国にある日本の私立学校在学中、厳格な寮生活と教育への反発もあって、上級生を殴って停学処分に。父親に「頭を冷やせ」と言われて帰国。偶然手にした冒険家、故植村直己氏の著書「青春を山に賭(か)けて」が、すねた高校1年生に「山」という大きなテーマを与えてくれた。「苦しいけど充実していました」と、夢中でやってきた10年間をかみしめる。
ただ頂上だけを見てきたのではない。3回のエベレスト登山で、ごみ問題への危機意識が募った。前回、88年に登頂した日本隊の大量のごみを見つけ、ショックを受けた。「ベースキャンプ付近はかなりきれいになっていますが、それより上のごみを何とかしなければ。来春にも清掃登山隊を組織したい」と話す。
そして、「遭難死したシェルパの遺族を支援する『シェルパ基金』を創設したい」。成功の余韻の向こうには、もう次の頂がしっかりと見えているのだ。<文と写真、サイバー編集部・平井桂月>
(1999年6月1日東京朝刊)

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