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なんとかなるさ!


 「こりゃ〜気長に構えるしかないかな・・・。」
昨日の高所順化で少し体調回復かと思いきや、なかなかうまくいかない。

 昨夜は胃痛と頭痛で一睡もできなかった。11日からABC(アドバンスベースキャンプ 5800m)に向かうがそれまでになんとか調整したい。

 かつてヒマラヤでは経験したことのない低所での高度障害。7000mまではいつでもすんなりと高所順化できていただけに、どこかで自分を過信していたのかもしれない。自分を知る良い機会になれば・・・と思う。でも、体とは面白いもので山に来ると自分の体調の具合がよく分かる。これは時間単位ではっきり自覚できる。今日、明日とどこまで回復できるのか、どうすればこの状態から脱出できるのか、これも挑戦。大切なのはいつでも前向きであるということ。必ずこの状態から抜けられるはず。 今日はハードに斜面を登るのは控え、BC前の川を上流に向かってのハイキング。高山病の時にテントの中でじっとしているのが一番いけない。精神的に参ってしまうのと、少しでも体に負荷をかけながら低酸素を全身に配れるような体質作りをしなければならないので、いずれにせよ体を動かさなければならない。

 しばらく歩いてふと川の方へ視線をよせたら魚がうじゃうじゃいる! 5000mの標高で魚を見るのは初めて! よくよく見ると口が平べったくひげが生えハゼのような魚や、白神山地で見たような岩魚のような魚だ。このような高原で命とめぐり会え、自然界の生命力を感じた。しかし、同時に、それこそ網があれば大漁だ。
「から揚げにして食べたいな〜。」
と、思ってしまった自分もいた。

 さらにしばらく川を登っていったら、シシャパンマが目前に現れた。この楽園のような世界にしばし頭痛を忘れられた。

 BCに戻ってみると新たな登山隊がBC入りしていた。10月中旬あたりが山頂アタックなのだろう。ヒマラヤは10月上旬を過ぎればグッと寒さが増す。そのかわり雪崩のリスクがそのぶんだけ減る。

 その頃を狙うのだろう。我々はそこまでの時間的な猶予はない。辛くないといえば嘘になるが、日本にいる時とは違い自分の事だけを考えればいい。ここにはストレスはない。

2002年9月9日
シシャパンマベースキャンプにて 野口健