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野口健、エコツアーを旅する ―ガラパゴス編 5―





生きた化石、ゾウガメと出会う

 クルーズ最後の上陸地は、チャールズ・ダーウィン研究所のあるサンタ・クルス島だ。ここでようやく、念願のガラパゴスゾウガメに会うことが出来た。何度も写真や映像で見たことのあったゾウガメだったが、その姿を見た瞬間、うわぁ〜!と思わず感嘆をもらしてしまった。この世に、本当にこんな動物が存在しているんだ・・・。 スティーブン・スピルバーグ監督が、ここまでやってきてゾウガメの顔をスケッチしたところからあの「E.T.」は生まれたのだそうだ。つまり、全くもってこのゾウガメは「E.T.」のような顔をしているのだった。生きた化石、その言葉がしっくり当てはまるくらい、動いていることが不思議な生き物なのだ。

 ガラパゴスの名前は、スペイン語でガラパゴ=「カメ」に由来している。つまりカメの島なのだ。ゾウガメは島ごとに進化をたどった典型的な動物だという。現在生き残っているのは11種で、島や地域ごとに固有種となっている。大きく分けると、甲羅の形によって「ドーム型」と「鞍型」の2種類がある。下草を食べる島のゾウガメはドーム型の甲羅を持ち、下草が少ない島のゾウガメは、首を上に上げて木の葉を食べるために鞍型の甲羅を持っている。生息する環境に適して、それぞれが進化をとげたのだ。

 16〜18世紀の海賊船、18〜19世紀の捕鯨船、19〜20世紀の観測や研究船による乱獲により、多くのゾウガメがその姿を消した。そして今では、人間の入植によって増えてしまった家畜により、彼らの餌である下草が食い荒らされ、更にはその家畜たちがゾウガメの卵や雛を捕食してしまっている。ピンタ島で発見された「ロンサム・ジョージ」はこの種の最後の生き残りだ。ピンタ島の固有種メスの発見に1万ドルの賞金がかけられたが、結局一匹も発見されなかった。今ではピンタ島は、研究目的以外は入島禁止。そして「ロンサム・ジョージ」=孤独のジョージが死んでしまえば、また一つの種が絶滅することになる。

 こうしたゾウガメの悲劇を繰り返さないためにも、チャールズ・ダーウィン研究所は存在している。ダーウィンのスピリットが今に受け継がれ、各国からさまざまな分野のエキスパートが集まり、動植物の保護・観察・研究が行われている。

その主な活動は、
1)ガラパゴス諸島の生物の分布調査(例えば、研究所で飼育された子ガメの足にはマイクロチップが埋め込まれている)
2)絶滅の危機にある動物の増殖(ゾウガメのほとんどは研究所で生後3年間飼育されてから元の島へ戻している)
3)野生化した移入動物の撲滅(ヤギ、ロバ、イヌ、ネコ、ネズミ、ブタなど)
4)島民やガイドの教育(そこにいる人たちの意識を変えることから始めなければ、何も観光客には伝わらないのだ!共に生きるために)


ここからが始まり

 いよいよガラパゴスを去るときが来てしまった。ものごとには必ず終わりがあるように、いつまでもこの平和な楽園にいることは出来ない。残念ながら。でも、近い将来、必ず私たちはここに戻ってこよう。たくさんのものを見て、感じて、考えた。だからこそもっと知りたいことがある。もっと伝えたいことがある。

 ガラパゴスでの日々はここで終わるけれど、健さんのエコツアーの旅は、ここからが始まり。ガラパゴスという楽園が、エクアドルだけのものでなく、その門戸を地球上の全ての人たちに開いているように、この地球上にはまだまだ知らなければならない多くの自然がある。一つを知れば、もっと多くの知らないことが見えてくる。本や映像だけでは伝わってこないもっと重要なものがある。だから自分の足で歩いてみたい。きっとそれが、私たちのエコツアー。




2003年6月29日
ガラパゴス諸島にて 谷口ケイ