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コジウスコ


ゼミの授業風景
キリマンジャロ登頂後、日本に一時帰国した際、渋谷で友人と待ち合わせしていたら、いかつい体格の人が突然声をかけてきた。「君、何しているの。時間あるの。君、体動かすの好きかい」と言って名刺をくれた。その名刺には「自衛隊募集案内所」とかかれてあり、そのまま近くの事務所に連れていかれた。その時、私は軍パンをはいていたせいか、しきりに自衛隊に入隊しないかと口説かれた。山が好きだと言ったら、「自衛隊に空挺部隊というのがあって、その中に空挺レンジャーがある。つまり特殊部隊で、山の中にこもって訓練を行うんだよ」と説明を受け、空挺部隊の訓練中のビデオを見せてくれた。

 かっこよかった。男らしかった。渋谷を見ても、ちっとも男らしい男なんか歩いていない。軟弱な服装をしてヘラヘラ笑って、ただ歩いているだけだ。やたらと群れを作り、どうでもいいような話をして「本当!ウッソー、まじかよー」とか言っているのを見ていると、心底うんざりしたものだ。

 自衛隊は私にはまぶしかった。私はその自衛隊の人に「空挺部隊の訓練を見学させてください」とお願いしていた。あまりにも突然に、しかも積極的にお願いしたものだから、その人はキョトンとした後、ビックリしていた。

 翌週、習志野駐屯地に見学に行き、パラシュートの降下訓練や、射撃釧棟を見た。男達の顔は真剣であった。国のために青春をこの殺風景な訓練所で燃やしているのだなと迫力に圧倒された。「俺もここなら本気になれるぞ!」と思い、入隊試験を受けた。勿論、防衛大学校のようなエリートコ一スではなく、一般入隊コースであった。

 すぐに合格通知をもらい、来年からは自衛官だと胸を張って英国に帰った。担任の先生にも自衛隊に行くと伝えた。先生は「もうちょっとゆっくり考えたほうがいい」と言っていたが、私の頭の中はすっかり空挺隊員であった。日の丸を見ると思わず敬礼をしたくなるのもこの頃からだ。

 そんなある日、先生が「お前、大学に行け。可能性のある大学がある。亜細亜大学だ」「なんですか。聞いたことないですよ。しかも、なんでそのアジア・・大学なんですか」「一芸一能入試というのがあるんだ。勉強できなくてもいいらしいぞ。お前には山があるだろう。自衛隊は大学を出てからもチャンスはあるんだ。とりあえず、大学に行って、じっくりと自分の人生をどうするか考えろよ」

 一芸一能入試、初めての響きであった。勉強できなくても大学に入れる。本当かなと思い、日本にいる兄に電話で相談した。世話好きな兄は、早速調べてくれ、受験案内のパアンフレットを送ってくれた。確かに、小論文と面接しかない。ただ、兄は「競争率はかなりのものがあるから簡単には考えるな」と言った。よくパンフレットを見ると、国際関係学部というのがある。大学に入ってなにを勉強したいという明確な目標がなかったので、いまいち大学受験に積極的にならなかったが、国際関係学部はまだ、私がしたい冒険活動に関連づけられそうだと思った。

 確かに気持ちは完全に自衛隊にあったが、7大陸の最高峰にも登りたいと悩んではいた。自衛隊に入れば、恐らく7大陸の挑戦はできないだろう。先生が、大学を卒業してからでも自衛隊に入れるぞと言っていたのを思い出し、高校3年生の10月上旬、一芸一能で亜細亜大学を受験した。