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徹底されたルール





 ガラパゴス諸島にはおおよそ16の島があるのだが、この島々をめぐるアンバザダー号に乗り込んだ。アンバザダー号は150人乗りの客船でナチュラリスト・ガイドとのエコツアーの参加者のみ乗船が許される。そもそもガラパゴスの国立公園内ではナチュラリスト・ガイドが同伴でなければ入ることが許可されない。乗船してすぐにナチュラリスト・ガイドからの説明会が開かれた。真っ先にガラパゴス諸島自然保護のために守らなければならないマナーやルールから始まった。動植物のみならず貝殻や砂、石、木片など全ての自然の状態にあるものを移動したり持ち帰ることの禁止、食べ物やアルコールなどの持ち込み禁止、トイレも小・大のいずれも島では禁止、動物へ餌を与えるのも禁止、動物への配慮(人間から一方的に近づかない)など、厳しく注意事項が繰り返し説明された。ナチュラリスト・ガイドから何度も何度も「ここは国立公園ですから!特別な場所です」「厳しいルールがあるからこそこの美しい自然が残されています」。

 印象的だったのが二点。まず一点目は「規則はあなた方に被害を与えません」「規則を守らなければあなた方が、ガラパゴスに被害を与えます。ここに何しに来たのかよく考えてください」だった。

 「規則はあなた方に被害を与えない」この言葉がいつになれば日本でも当たり前の事として受け止められるのだろうか。事実上 無法地帯となっている日本の多くの国立公園。規則の強化を訴えれば地元観光業者から待ったがかかる。何故ならば規則が強化されれば今までのように好き勝手に営業ができなくなるからだろが、彼らには100年後の自然環境など、はなから眼中にないのだろう。そして「規則ではなく、あくまでもモラルの問題」と 理想論をかかげて逃げ腰になる。その結果が富士山だろう。

 そもそも樹海に不法投棄する業者や、トイレなどのし尿をばら撒く山小屋にモラルという概念が存在するのだろうか・・・。毎年、五合目から頂上にかけて登山者や山小屋業者から約510トンのゴミが山に捨てられているのだ。地元のNPO団体が集めた寄付金からバイオトイレを数機設置したが、その維持費のために置かれたチップ箱を破壊して小銭を盗む登山者までいるのだから・・・。

 次にナチュラリスト・ガイドの「ここは国立公園ですから!」という言葉の響きの中に「国立公園」という存在に対して尊敬や敬意を感じた。「国立公園」は特別な場所であり神聖な領域なのだ。いつまでもその魅力を残さなければならない責任が我々にはある。使い捨てにしちゃいけない。「国立公園」を軽々しく扱ってはならないのだ。

 ガラパゴスを訪れる観光客は飛行場で100ドルの入島料金を支払い、国立公園内に入るときはナチュラリスト・ガイドが同伴でなければならず、それなりに費用がかかるが、それを当然の事として受け止めている。だからこそ「環境保護と観光開発」とのバランスが理想的に機能している。細かい事情は日本とエクアドルでは異なるけれどガラパゴス諸島での自然と人間社会との係わり方から我々、日本社会は学ばなければならないことがあるはずだ。


2003年6月27日
野口健