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地元発のエコツーリズム

 東京都が募集した6名の都レンジャー隊員が決定した。競争率も23倍ほどであったそうで、マスコミにもさほど取り上げられない中にありながら、その注目度や人気には正直驚いた。私の元にある高校生から「大学を卒業したら都レンジャーになりたい。今から勉強します」といった内容の連絡を頂いたりもした。2年以上前から都レンジャーの必要性を東京都に提案し続けてきてやっと念願の都レンジャー制度が実現するのだが、私の中で1つの懸念材料が残っている。その懸念材料を少しでも払拭するために、断食明けに再び小笠原に向かったのである。

 この一年間で小笠原訪問は4回。地元の多くの方々と小笠原でのエコツーリズムのあり方や都レンジャーの役割や期待など協議を行ってきた。特に地元のNPO団体の意識の高さや高度な専門知識や情報量はとても貴重なものだった。しかし、多くの意見や提案が関係者から出されるのだが、まとまらない。それもそのはずで意見が異なる団体同士が面と向かって積極的な意見交換を行おうとしない傾向がある。そして対立した構図だけが残されていく。私の前では双方の批判合戦が繰り広げられる。時には批判もいいが批判に徹しているだけではそれは足の引っ張り合いであり、評論家にすぎないわけで、みんなで力を合わせて新しい志にチャレンジする姿勢ではない。私はもっと村の方々が腹を割って話し合ってほしいと、心底願っている。小笠原に対する熱い気持ちは充分すぎるほど伝わってくるだけに、もったいない。

 東京都が小笠原でのエコツーリズムを提案してガイドの認定制度を作ったり、また要綱によるルール作りを行ってきた。その延長線上に都レンジャーが誕生するのだが、やはりなんといっても小笠原の方々のエコツーリズムに対する思想が抜けてしまっては意味がないし、そもそも地元発のエコツーリズムでなければ定着していかないだろう。都レンジャーがその任務を展開する前に森下村長には村長の直轄の諮問機関を早急に立ち上げてエコツーリズムのあり方について村でその背骨(土台)を作ってほしいと要望した。




 環境保護といった大きな流れに異論は目立たないものの、各論になるとまとまらない現状の打開を森下村長のリーダシップに期待したい。村の将来の姿は村によって決められていくべきであり、そのサポートとしての存在が都レンジャーであると私は考えている。村と都レンジャーが連携し、一緒になって自然保護と活用を念頭に自然科学に基づいた根拠を明確にし誰からにも納得されるようなルールを作っていかなければならない。エコツーリズムのさらなる推進のためにも、是非とも村の明確な姿勢を示していただきたい。

 小笠原の夜、村の人々と酒を酌み交わしながら、ふと、都レンジャーの隊員達が私に代わってこの同じカウンターに座りながら、こうして熱く語り合っている彼らの姿を想像してみたら、よくここまできたものだと感慨深いものがあったが、まだまだスタートラインだ。思わず小笠原と都レンジャーの将来に乾杯していた。

2004年 5月31日 野口健