富士山から日本を変える
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青木ヶ原樹海ゴミゼロ作戦対策本部」設立への決意

 11月2日、富士河口湖町の西湖地区にあるNPO法人富士山クラブの「森の学校」で青木ヶ原樹海ごみゼロ作戦5カ年計画を目指し「青木ヶ原樹海ゴミゼロ作戦対策本部」設置の共同記者会見を行った。会見場には富士吉田市、富士河口湖町、鳴沢村村長といった地元3市町村長を初め環境省レンジャー、山梨県富士山レンジャー、富士山クラブ、富士山登山学校ごうりき、学生ボランティア団体が集まって記者団に対して「これから我々、連携しながら富士山の自然保護に取り組んでいく」と宣言した。特に3市町村長が同じ席に横に並び、共同記者会見している姿を見ていたら、呼びかけ人であるにも関わらず感無量であった。

 この富士山の麓に関わらず地元市町村が連携しながら取り組んでいく姿はあるようでなかなかない。富士山を取り巻く環境も例外ではないようで、地元市町村と連携したいとの私に意見に「そりゃ無理だよ」といった声が多かった。それだけに萱沼富士吉田市長、小佐野河口湖町長、渡邊鳴沢村村長と共に自身が掲げている青木ヶ原樹海ゴミゼロ作戦に取り組もうと決意表明が実現した事は極めて意味が大きかった。

  地元が中心になって取り組まなければ富士山は100万年たってもきれいにならない。今年に入って山梨、静岡両県知事と中曽根元総理が大手代理店の仕切りの中、「富士山国民会議」を立ち上げ共同記者会見を行った。これには多くのマスコミが全国ニュースで報道し、注目された。富士山の自然保護が全国で注目されることは大変素晴らしいことです。    

 しかし、それと同時に具体的になにをすべきか、特に地元の人々の富士山の環境保護に対する全体的な意識のボトムアップがなければ、いくらスローガンを掲げても風呂敷を広げただけで終わってしまう。行政に限らず日本社会は縦割り。1つの行政、社会の中にも縦割りがあるわけで、関わる行政が複数となればさらにその度合いがさらに明確になる。私が「青木ヶ原樹海ゴミゼロ対策班部」設置にこだわったのは、脱縦割りであり、富士山は1つなんだから、富士山に関わる行政を初め民間団体もみな目標を1つに取り組んでいく環境作りの第一歩を目指したからです。

  NPO団体もそうです。私が富士山クラブのメンバーになったら、他のNPO団体が「野口健が敵にまわった」と声をあげた。NPO団体もそれぞれの個性があり、各専門分野があります。細かい方法論が異なるのは当たり前で、目指すゴールが同じであれば力を合わせて連携すればさらに大きな流れを生み出せる。私の知る限り足の引っ張りあいが多い。せっかくの取り組み、これではもったいない。人間3人集まれば派閥ができるといいますが、エネルギーは前へ前へと向けるべき。

 まず、我々が行うのは徹底したパトロールと清掃活動。ごみを回収しながらも同時に新たなごみが捨てられない社会を築かなければ、ごみはなくならない。パトロールは環境省や山梨県のレンジャーだけでは間に合わない。我々、NPOや地元住民の役割でもある。一向に減らない不法投棄に対し、地元住民にも呼びかけ、地元住民の多数の目による監視体制を築きたい。行政だけに任せるのではなく、行政と連携しながら自分達でできることは自分達でやる。



  環境問題は自然が相手ではない。人間社会が自然環境を破壊しているわけだから、環境問題の相手は人間社会だ。環境問題は街づくり。自然環境に配慮した人間社会を作らなければならない。そもそも誰のための環境問題なのか、私は地球のための環境問題だとは思ってない。環境破壊は地球にとってはどうでもいいことかもしれない。それこそ、氷河期も経験しながら、地球は地球であり続けたわけです。それでも地球のための環境問題というならば、それこそ人間なんか存在しないほうがいいのかもしれない。そうではなく、人間のための環境問題だと思う。地球環境が破壊されれば一番困るのは人間だ。人間が健康に生きていくために必要なのがきれいな空気や水などといった地球の資源です。樹海には医療廃棄物から硫酸ピッチ、アスベストまでが捨てられている。土壌汚染や水質汚染が進めばいずれ人が住めなくなる。そうなってからでは遅い。

 時に「ごみ拾いだけでは世界遺産にならない」といった意見も耳にしますが、しかし富士山には拾っても拾ってもゴミがまだまだ、まだまだ沢山ある。それが現実なのです。世界自然遺産を目指し、それが難しいとなれば、それでは世界文化遺産を目指そうという流れもあります。それ自体を否定するつもりはありませんが、世界遺産ありきで目の前の問題に取り組まなければそれこそ今までも繰り返されてきたようなイベントだけで終わってします。また屋久島のように世界遺産になってしまったがために自然環境が荒れてしまったケースも忘れてはならない。私達は過去から学ばなければならない。

  環境問題への取り組みは地味なものです。コツコツ、この繰り返しです。しかし、このコツコツも多くの仲間と取り組めばとても楽しい。そして続けていけばコツコツが大きな流れを生むものです。富士山クラブと一緒になって取り組んできたこの6年間から私が現場から学んだことです。その先に富士山が世界遺産になれば素晴らしいじゃないですか。富士山の世界遺産を政治的な力で目指すのも1つの方法です。しかし、大切なのは世界遺産に向けて取り組むその過程ではないでしょうか。
 
 富士河口湖町の小佐野町長はボランティアによって回収されたゴミ処理費用について「原則的には地元自治体が負担する」と清掃活動を支えることを合同記者会見で表明し、渡邊鳴沢村長は「富士山の世界遺産を目指す上でも、ごみの問題は捨て置いてはいけない」と官民連携の必要性を強調し、萱沼富士吉田市長は「富士山の美化、環境保全のためには環境教育が重要だ」と話し義務教育のなかでの環境教育の普及を訴えていました。3名の言葉に力強いリーダシップの姿を感じました。

 富士山で起きていることは日本全国どこでも起きている。日本の代表である富士山が変わればその影響は全国にひろがるでしょう。富士山から日本を変えるためにも、私はこれから地元3市町村長や地元民、あらゆる団体と一緒になって夢の実現へ向けて一歩また一歩、前へ前へと進んで行きたい。