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「スーさんの死 遅すぎたマナスル登頂」

 5月28日、小西さんとマナスルに残って登山を続けていたオーストラリア人女性登山家のスーさんがマナスル登頂後に山頂直下のクレパスに転落し遭難。彼女のシェルパが転落したクレパスに向かって彼女の名前を読んだが返事がなかったとのこと。シェルパ一人では救助も行うこともできず安否を確認できないまま下山。最終キャンプからの無線連絡で彼女の遭難は伝えられたが、マナスルに残っているのは小西さんとそのシェルパ達だけ。小西さんはすでにマナスル登頂を断念しベースキャンプへと下っていた。スーさんの安否は確認されないまま救助活動も行われることなく今春、マナスルに挑戦していた登山隊は全てがその活動を終了。なんとも悲しく後味の悪い結末であった。

 スーさんのクレパス転落をカトマンズで聞かされた時に、状況からして救助活動が不可能であることを知り、極めて不謹慎ながら彼女の「即死」を願っていた。8000mを超えた高所であり、単独での脱出は極めてありえない状況で、また無傷であることもないだろうと推測する中で、仮に彼女がクレパスの底で生存しながら、けっしてやってこない救助を待っていたとしたら、それこそ残酷で可愛そうでならない。

 あくまでも結果論でしかないが、彼女のマナスルアタックは遅すぎた。谷口ケイさんやグルジア人登山家のギーアが登頂した頃は多くの登山隊が集中していた。もし、その頃の遭難ならば救助活動が行えたかもしれない。そしてシェルパの話では5月下旬はすでに登山シーズンを終えており、高温の為にクレパスが緩み滑落しやすくなるとのこと。谷口さんのアタック時もすべに至る所でクレパスが開いておりロープを使用したとのこと。エベレスト世界最短時間で登頂したペンバ・ドルジ・シェルパが「スーのアタックは時期が遅すぎた。氷河が緩んでいたのだろう」と語っていた。登山は他のスポーツと違い小さなミスでも時に命を失う。取り返しがつかないのだ。念願のマナスルに登頂しながら、その直後の遭難はとても残念であり、またもったいない。ロープさえ繋いでいたら、と思ってみても今となっては全てが遅い。私達ができる事は遭難事故を繰り返さないことだ。これからも安全管理を徹底して行なっていきたい。スーさん、素敵な笑顔をありがとう。そして安らかにお休みください。さようなら。

2006年5月30日 野口健