「神宮の森を訪れる」
上空から日本列島を見ると森ばかり映るが、そこに分け入ってみると大半が針葉樹ばかりの人工林で、うっそうとしていて薄暗い。
日本の森は1950年代ごろから広葉樹の伐採が始まった。経済性の高いスギ、ヒノキなどの針葉樹が広葉樹に取って代わった。白神山地のブナは今となってはブームとなり観光客が殺到しているが、一昔までブナを「?」と書いたように、木材としての価値に低さから大量に伐採されたそうだ。近年、熊が里に出没するのも広葉樹林の減少が影響しているといえる。
森本来の姿を取り戻そうと今年から長野県小諸市で森林の再生活動を始めたが、とても難しい。林業としての森作りならば針葉樹を縦、横に決められた間隔で植えていけばいいが不規則な間隔で様々な植生を混ぜる自然の森となると話は別だ。北海道で脚本家の倉本聰さんがゴルフ場を自然の森に変える提案をされ、植樹がスタートしたが、どの間隔で木を植えていいのか意見がまとまらない。そこで倉本さんの発案でゴルフボールを無造作に打ち込み、落下地点に木を植えたら意外と良かったそうだ。
私はよく明治神宮に訪れる。そのたびに敷地内の森が極めて原生林的である事に感動する。もちろん、明治時代の人々が作った人工林なのだが、戦争直後まではここに多くのキジが生息していたとのこと。一般の人工林と違って生き物の多い森であり、明治時代の人々の緻密な計算の上つくられた“自然”の森だった。
こんな話もある。東京23区には神社が800あるが、平均すると1つの神社で年間170台分の車から排出される二酸化炭素(CO2)を吸収するとのこと。さらに国学院大学の調査で、神社を取り囲むように存在する「鎮守の森」は一般の森の3.3倍CO2を吸収することも判明した。商用目的で植えられたスギやヒノキと違い、鎮守の森ではCO2をより吸収するとされるクスノキやシイなどの広葉樹が古くからはぐくまれ大きく成長しているからだという。
人は自然を壊す事も出来るが、同時に自然を作れる事もできる。先人の行いへの感謝とともに、鎮守の森から知恵と勇気を頂いた。 |