富士山から日本を変える
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「清掃キャラバン開始」

 12月26日、エベレスト街道で清掃活動をスタート。ルクラ村〜ナムチェバザール村〜クムジュン村を清掃しながらの清掃キャラバン。特にナムチェバザール村はシェルパ族にとってのメッカ。シェルパ族最大の村だ。このナムチェバザールで清掃活動を行いながら、村人に何ゆえにゴミを拾うのか、活動を通じて理解されていけば、ナムチェバザール村から他の村々に広がっていくだろう。「富士山から日本を変える」のシェルパ社会版だ。

 

  ルクラ村から清掃しながらトレッキングを開始したが、野口隊(総勢18人)が歩きながらゴミを拾う様子をすれ違う村人が不思議そうに眺めていた。嬉しかったのが日本人のトレッキングツアー客が「頑張ってくださいね!私達も拾いますから!」と声をかけてくれたことだ。実は清掃トレッキングツアーを募集していたものの、なかなか参加者が集まらずツアー自体がキャンセルになっていただけに(私の人気がないのか、または正月明けといった時期が良くなかったのか、それとも清掃トレッキング自体に違和感があったのか分かりませんが)偶然出会った日本人トレッカーが応援してくれたのは慰めになりました。

 

  28日からナムチェバザール村で清掃開始。村人に「一緒にゴミを拾いませんか?」と声をかけるものの、「日当はいくら?」と聞かれガックリ。「自分の村を掃除するのだからお金は払えない」と返事すれば「それならば参加しない」とあっさり。ひなたぼっこしている若い男性二人に声をかけてみたら、「忙しいから」と言うので「ひなたぼっこしていて、なにに忙しいの?」と再質問してみたら困った顔しながら「忙しい」と繰り返していた。そして最後に「村のほうにゴミの処理費を払っているのだから我々はゴミを拾う必要はない」と本音を漏らした。

 次に遊んでいる子供達にも参加を呼びかけたら驚いたことに「ゴミを拾うところをお父さんに見つかったら叩かれる。それにゴミ拾いは私達のやることではないのよ」と話してきた。ネパール社会は階級社会です。階級によっておおよその職業が決められる。「シェルパ族の階級ではゴミを拾わない」との事らしい。したがって親にゴミを拾うところを見つかれば「はしたない」と叱られるのだろう。

 

 子供達に「ゴミを拾うことは格好悪いことじゃない。格好良いんだよ」と伝えても相手にされず、ケラケラ笑うので内心「何様だ!」とムッとし、「じゃあね!サヨナラ」と別れようとしたら、さっきまで僕を馬鹿にしていた子供達が突然ゴミを拾い始めたのだ。子供達は素手のまま汚れたゴミをつかみ私のゴミ袋に入れてくれる。村の大人たちは参加してくれなかったが、子供達が動いてくれた。時折、キョロキョロしながら親に見つからないか心配そうな表情をしていたのが可愛そうだったが、彼らの勇気ある行動に心から嬉しかった。日本でも同じ。大人はなかなか動こうとしないが、子供達は一緒に動いてくれる。

 ルクラからナムチェバザールまでの4日間で約300キロのゴミを回収したが、なによりも嬉しかったのが、子供達が参加してくれたことだ。村中の人々が自主的にゴミ拾いを始めたマナスル山麓のサマ村と違いナムチェバザール村はエベレストの玄関口だけあって多くのトレッカーや登山隊を訪れるためにシェルパ社会の中でも最もお金持ちが多い。したがって「ゴミ拾いなど貧しい人がやるものだ」といった驕りを感じたりもしたが、まずは始めの第一歩。富士山での清掃活動も8年前は数百人も集まらなかったのに、今年は4800人が全国から集まり富士山クラブと共に約80トンものゴミを回収したのだ。ここナムチェバザールでも活動を続ければ可能性がある。そう希望を感じ、明日からは清掃活動をクムジュン村に移す。


2006年12月29日 ナムチェバザール(3446m)にて 野口健