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「クムジュンでの清掃」

 2006年最後の日(12月31日)、我々はクムジュン村(3780m)で村人と共に清掃活動を行っていた。同行カメラマンの平賀淳君と「日本ではもうお正月。紅白歌合戦だよ。俺達はヒマラヤでゴミ拾い。まあ〜俺ららしいか」と慰めあっていた。しかし、嬉しいこともあった。ナムチェバザールではなかなか村人が参加してくれなかったが、クムジュン村は続々と参加者が集まってくる。冬のシーズンをカトマンズで迎える村人も多くシーンと静まり返っていたが、それでも20人以上の男女が参加してくれた。エベレスト清掃活動にはクムジュン村からも多くのシェルパが参加していただけに清掃活動には理解し共感してくれた。日本人トレッカーの女性二人も参加してくれました。約350キロのゴミを回収し村の焼却炉で燃やした。

 

 僕はこのクムジュン村が大好き。ここにシェルパの家と同じような岩小屋でも建てて年に一ヶ月ほどゆっくり過ごすのが夢です。娘の絵子さんも夏休みになったらクムジュン村で村の子供達と裸足になって駆け回ったほうがいいに決まっている。家族はクムジュン。そして私は出稼ぎ労働者として日本で過ごし年に一回家族に会いにクムジュンに帰る。これ、なかなかのプロジェクトですが、そのように家族を説得するのか至難の業。私の密かな夢としていつか実現させたいものです。

 クムジュンでの清掃後、村の若者達に呼ばれ相談があるというのでなんだろうと思ったら若者の一人が「クムジュン村で青年会を作りたい。そのクラブで村のごみ拾いなど環境問題について取り組みたい。アドバイザーになってほしい。一緒に協力してほしい」とこれはとても嬉しい相談だった。もちろん引き受けたが、1つ注文をつけた。クムジュンにはエベレストを初登頂されたエドモンド・ヒラリー卿が建てた立派な学校があるが、その子供たちを対象にした環境教育もプログラムに入れてほしいとお願いした。大人たちだけでゴミを拾っても意味がさほどない。環境問題は教育だ。彼らも「ぜひ学校に相談して実現させたい」と快く了解してくれた。徐々にではあるが、永年続けてきた清掃活動も直実に地元の人々に伝わりつつある。

 谷口けいさんは一足先に日本に帰り、シェルパ達は女の子の家に出掛けていったきり帰ってこないので、仕方なく?年越しは淳君と二人ワインを飲んだ。それにしてもネパールのテレビでもフセイン元大統領の死刑執行の様子が報じられていたが、目隠しさせることもなく、首に縄をかけられたフセイン元大統領の姿にショックを受けた。死刑執行直前までカメラにさらされ、後ろでは黒いマスクで顔を隠している人たちがフセイン元大統領を茶化し罵っている様子に武士の情けはないのかと怒りすら覚えた。東京裁判ではないが、あれではただの復習劇。

 ベトナム戦争で我々(西側諸国)が応援していた南ベトナムの兵士が北ベトナムの兵士を路上で射殺したショッキングな映像が世界中を流れ、南ベトナムを応援していることに多くの人が疑問と憤りを感じたように、イラクの新政府の野蛮なやり方に違和感を覚えたのは私一人でないだろう。復讐は新たな復讐しか生まない。ユーゴスラビアのミロシェビッチのように国際刑事裁判所で裁けなかったのか。死刑制度のない国際刑事裁判所ではなく、仮にフセインを死刑にすることでブッシュ米大統領が低迷する支持率を高めようとしていたのならば愚かなことだ。フセイン元大統領の絞首刑執行直前の映像をヒマラヤで見てしまい、せっかく淳君とめでたくヒマラヤで新年を迎えようとしているのに、ついつい怒りの演説をしてしまった。いずれにせよ、イラク内でフセイン元大統領を裁いたことで復讐の連鎖にさらなる勢いがつき、今後のイラクの将来に暗い影を落とすだろう。

 

 私ですが、昨年夏から10キロほど体重を減らし、正直体調を崩したままネパール入りしましたが、ヒマラヤでの清掃キャラバンが始まってからみるみると体調が良くなっていくのが分かる。体重もヒマラヤ入りしてから3〜5キロほど戻ったと思う。せっかくシャープになった顔がまたぷっくりしてきた。よく寝、よく食べ(食欲完全復活)、よく歩き、そしてなによりもストレスレス。ヒマラヤでの生活が本来の私にとっての正しい日常なのかもしれない。淳君からも「けんさん、肌つや良くなってきましたよ」と指摘された。それにしてもヒマラヤの空は真っ青。真っ青な空と雪の真っ白な雪。そして夜は満点の星空。

 

 清掃活動はいったん中止し、春のチョモランマ登山の訓練のため1月7日にロブチェピーク(6135M)の登頂を目指します。清掃活動はロブチェピーク登頂後、再び開始します。

1月3日 ディンボチェ村(4360M)にて 野口健