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野口健からのメッセージ

 
  「万年筆ベストコーディネート賞を頂いて」
  伝えるということは

 太平洋戦争をテーマにした映画「硫黄島からの手紙」を観賞した。その中に、玉砕を前にした多くの将兵達が家族などに書き残した手紙を米兵に見つからないよう土に埋めるシーンがある。一緒に見た友達は「手紙が相手に届かなければ意味がないのに。何で土に埋めたのだろう」と不思議がったが、私には死を目前にした彼らが防空壕でローソクの光の下、最後の言葉を書きつづった気持ちが痛いほど分かる。

  一昨年、ヒマラヤ遠征での出来事。 上部キャンプで悪天候に襲われ身動きが取れなくなった。地吹雪で吹き飛ばされそうな小さなテントに独り閉じ込められ「俺はここで死ぬのか」と恐怖に震えていた。

 ふと気がつくと、手近にあった紙切れに日本にいる家族や仲間達に向けた手紙を書き残していた。紙がなくなるとマットにマジックでメッセージを書き続けていた。この言葉を自分で届けることが出来なくてもいずれ誰かが発見し相手に届けてくれるのだろうと信じて。
そして、手紙を書き続けることで、遠く離れていても家族や仲間達と気持ちで繋がっている安心感を味わうことができた。「硫黄島からの手紙」やヒマラヤでの経験は、人間は思いを人に伝える為に生きている事を教えてくれた。

  「伝える」ということはどういうことなのだろうか。以前、新聞報道で「アメリカ軍、イラクで武装勢力を1000人殺害」などと報じられる事がある。だが、それはあくまでも情報のみで、そこには一晩で1000人が殺されたというリアリティーなど微塵も感じられなかった。「またか」と平然とページをめくろうとしている自分がいる。
もし、仮に殺害された1000人の人生を、一人ずつ生まれてから亡くなるその瞬間までのドキュメンタリーとして見たら、恐ろしさと残酷さを全身で感じるだろう。「伝える」ってそうゆう事じゃないだろうか。

  先日、万年筆の最も似合う人に贈られる「万年筆ベストコーディネート賞2007」を頂いた。昨年度の受賞者である小池百合子さんが「この賞は伝えることがテーマ。あなたはこれからも現場から世界にむけて環境問題などに関するメッセージを発信してほしい」と私を推薦したのだ。私は単なる情報ではないリアリティーのある最前線の声を「伝え」続けていきたい。