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  第1回アジア・太平洋水サミット・セッション
「ヒマラヤ地域における気候変動、氷河、水資源」を終えて

 本日、皇太子殿下御臨席のもと、17:00〜18:30まで【中会議室(1F)】にて「水と気候パネル:ヒマラヤ地域の氷河と水」を開催し、先ほど建設的な議論のもと、成功裏に会議を終了することができました。

 冒頭主催者であるICMOD(国際総合山岳開発センター)アンドレアス・シルドセンター長よりこのセッションが、水サミットの象徴となる事を期待し、また、ヒマラヤ山岳地帯の氷河の保全は、流域国10億人以上の人々に影響すると、問題意識を提起されました。

 インドのサディソン・ソズ水資源大臣より、温室効果ガスの削減は先進国、工業国が人類のために、そしてインドとしても国をあげて努力をしていかなければならないテーマである旨、報告がございました。また、科学的根拠、データーに基づいた、気候変動による災害の軽減を率先し、氷河の融解等について裏付けをするとともに、研究結果を適切な場で発表すべきであると指摘をいたしました。気候変動は我々の課題であり、発展途上国に対して技術移転をする等、人類すべての人々の利益として活用すべきであると述べられました。

 その後、フー・スーイー中華人民共和国水利部副部長から、グローバルな課題に対し、地球規模の対応が必要であると述べられ、京都議定書などの責任も果たしていかなければならない旨、お話がありました。また、自国の気候変動問題に触れ、干ばつ、洪水問題、生態系、中国西部の氷河の21%もの減少など、事例をあげられました。また、水資源における影響の緩和を今後実施するために、水資源管理の強化、灌漑、インフラの強化、水の分配、海水の使用、水力発電の強化等、国際的な地域社会との協力のもと温暖化問題に対処していきたい旨、報告がございました。

 続いて、日本政府を代表して、山本順三国土交通大臣政務官より、アジア・太平洋地域に対して積極的な技術移転をしていく旨発言がございました。また、日本の土砂災害に対処する砂防技術の蓄積を生かして、世界各国へ技術協力等を行ってきた事例を取り上げました。

 ヒマラヤ地域に対しては、気温の上昇に対して氷河の融解が災害を引き起こしており、氷河湖問題に関して大きな関心を持ち、氷河湖の決壊と気候変動問題による水関連災害に対して、日本政府として貢献可能な分野に対して可能な限り支援をしていきたい旨、ご発言がございました。

 最後に私もスピーチの場を頂き、温暖化による氷河の融解および氷河湖問題、そして、ヒマラヤからの溶け水がネパール・ブータン・インド・バングラデシュを通り、ベンガル湾に抜ける流域国で起こっている状況の報告をさせて頂きました。

 そもそも、今回のセッションを開くきっかけとなったのは、私の実体験です。これまで36回ほどヒマラヤに行っておりますが近年、雪崩の多発、氷河の崩壊、氷柱の減少等を肌で感じてまいりました。5300m地点のBC(ベースキャンプ)では雨が降り、6300m付近のABC(アドバンスベースキャンプ)でもみぞれ混じりの雪が降りました。100m上がると気温が0.6度下がると言われておりますから、これは本来考えられない事です。

 また、氷河も年々後退し、融解することによって出来た氷河湖の水量も日々増加をしております。私が訪れたイムジャ氷河湖では現在直径1`、最大水深約90m、推定水量2800万トンと言われております。もしこの氷河湖が決壊すれば、チュクン村・ディンボチェ村・パンボチェ村、タンボチェ村などの村々が大打撃を受けると予想されます。トレッキングシーズン中に決壊がおこれば、年間約2万5千人のトレッカー等、被害がどれだけでるのか分りません。

 そのような観点から氷河湖問題は、第1回アジア・太平洋水サミットにおいて優先テーマの一つである「水関連災害管理」に当てはまるのではないかと考え、事務局に提案をさせていただきました。温暖化による海面上昇はすでに世界中の多くの人々に知られています。しかし、ヒマラヤを含めた氷河の融解及び、氷河湖問題はまだまだ知られておりません。本日の会議がきっかけとなり氷河の融解及び氷河湖問題が広く知られ、世界中で危機的な状況に陥っている現状をすべての人間が理解をし、共通の深刻な問題であると認識して頂ければありがたい。
自分自身が提議をした氷河湖問題がこのような国際会議において採用され、この「ヒマラヤ地域における気候変動、氷河、水資源」にて、支援が得られた事を運営委員の一員として大変うれしく思っております。

 私は現場の人間ですから、この会議で動き出した案件を今後も見守りたいと思っておりますし、これからも現場を重視し、どのようにヒマラヤ地方が変わって行くかを皆様に報告し続けていきたいと思っております。

野口健