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「ヒマラヤに学校をつくろうプロジェクト」後編


サマ村の子どもたちと。

 ヒマラヤ・マナスル峰山麓のサマ村で学校を作ろうと3年前からプロジェクトがスタートしましたが、ようやく一棟完成しました。学校が建つまで紆余曲折あった出来事など前回、前々回の号で紹介しましたが、1つ1つコツコツの積み重ねで何とか一棟完成。次はもう一棟の寮と図書館やグランドなどに着手したい。

 ヒマラヤに学校を建てたいと夢を抱くのは実に簡単ですが、実現させる事は容易ではない。「やりたい」と思うことと、実際に「実現させる」ことはまったく次元が違う。それはエベレスト挑戦や富士山清掃活動も同じ。緻密な計画に戦略、そして何よりも大切なのが多くの方々にプロジェクトを理解し共感して頂くこと。

 例えばエベレスト登山ならば一回当たり1000万円を超える遠征資金を集めなければならない。今ならまだしも当時は無名な学生登山家。実績もない中での資金集めはそれこそが冒険でした。富士山も一夏30万人が登頂する山。缶のポイ捨てだけでも大変な量なのに樹海などに不法投棄された産業廃棄物を含めると、いやはや天文学的な世界に入る。10年前、富士山清掃活動を始めた頃は100人が集まればいいほうだった。それが昨年では6800人。活動を続けるうちに確実に輪が広がったのだ。おかげで今では5合目から上のゴミはゼロに近い。

サマガオンのお寺にて登山の安全祈願を行う

2009年1月 カトマンズにてマナスル基金に関しての記者会見の様子

朝日に照らされるマナスル峰(キャンプ1から)

 掲げた約束を実現させる為にはあの手この手を使った。時にそこまでやるのかと手段を選ばない事もあった。油汗をかきながらの駆け引き含め、何かを成し遂げるという事は前後左右、裏表、実に色々あるものです。

 そして何よりも私を最も助けてくださったのは、世論でした。世論が動けばマスコミも企業も政治家も役所も動く。富士山清掃から私が学んだ事は人間学だったのかもしれない。この連載ページでも何度も繰り返して伝えているように環境問題の相手は自然ではなく、人間社会。どのような社会を築いていくのか、それが環境問題です。

 このヒマラヤでの学校建設計画も私一人では到底実現できなかった。特にこの不景気の真っただ中にヒマラヤで学校を建てる事にどれだけ協賛して頂けるのか、まったく未知数でした。それが新聞や雑誌などでマナスル峰の麓に学校を建てたいと、マナスル基金の立ち上げを発表したら問い合わせが殺到。「日本隊が1956年にマナスル峰に初登頂を果たし日本社会に夢と希望を与えた」「日本隊がマナスル峰初登頂した事で意識の中から「戦後」という言葉が消えた。日本人が自信を取り戻した瞬間でした」といった手紙が多く私の元に届いたのだ。「退職金の一部ですがぜひ使ってください」とマナスル基金に寄付して下さった方。個人のみならず企業や財団からも寄付が集まった。

2009年5月サマガオンでの清掃活動には、多くの村人たちが集まった

サマガオン 建設中の学校寮

手作業にて木材の伐採がおこなわれる

  コピー機などで有名なリコーは、以前から積極的にCSR活動を行っているということで、取材を受けたことがありました。この会社は、会社としてのCSR活動としてだけではなく、社員でFreeWillクラブという社会貢献クラブをつくり、会費をあつめ、多くの社会活動やボランティア活動に協力しています。今回、マナスル基金にも多大な協力をしていただきました。

 また、嬉しかったのが秋田県立大学研究サークル「ヒマラヤプロジェクト」に所属する学生さんからご連絡を頂き「マナスル基金で建てられた学校にソーラー発電を設置させてください。私たちが来年2月にサマ村に訪れて学校にソーラーシステムを設置してきます」との申し出に驚いた。「費用は?」と尋ねたところ「大学から特別研究費として一部もらい、残りは私たち学生で工面します」とのこと。「えっ!」とこれまた驚いたが、ぜひやらせてください!とのことで有難くご協力して頂くこととなりました。

 マナスル峰挑戦の時に村人と交流が始まりその場で学校を建と宣言してから3年間。村人への説明から日本での資金集め、トラブルも一つや二つではなかったが、そんな時には「前へ前へ」と声を出しながら進めてきました。そして多くの方々のご協力あって校舎一棟が建ちました。この場をお借りし御礼させてください。ありがとうございました。

 来年からは第二工事が始まります。いつの日か、日本の子どもたちとマナスル学校の子どもたちが交流するような事が実現すればそんな素晴らしい事はない。新たな夢がこうして着実に膨らんでいく。

ポーターによって、1本づつ運ばれていく


ネパールの建物の多くは、石の壁で出来ている