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明日から最後の上部





 今朝、起床するなり、サーダーのダワタシがチョモランマ(エベレストのチベット側)と無線連絡が通じたと報告してくれた。驚いたことにチョモランマに挑戦している登山隊のテント135張りが破壊され、ネパールからテントを買い寄せているとの事。ネパールサイドでも80張り前後が破壊されたことを考えれば、その被害の大きさに唖然とする。絶えずネパール側よりも風の強いチベット側。僕もチョモランマには苦い思い出が沢山あるが、その大半が強風と乾いた空気に気管を痛めつけられたりと、散々と「風」にいじめられてきたものだ。我々も大変だけれど反対側はさらに困難なのだ。

 午後からは上部位キャンプ行きの準備を行なう。前回、強風の為にキャンプ3まで行けなかったのがどこまで影響するのか。遅れた高度順化。日程的に8000mのサウスコル(最終キャンプ)がワンチャンスとなった今、どのようにタクティクスを組むべきか・・・。天候と体と相談しながら、最後の上部での清掃活動に賭けたい。

 この間、キャンプ2付近で発見した遺体は1973年秋に遭難した日本隊のシェルパだとの情報が入る。ペリチェ(シェルパの村)にエベレスト(ネパール側)で遭難した全ての人々の遭難碑があるが、そこに刻まれているネームリストや年代が一致したのと、当時を知るシェルパの老人の話から、おそらくそうだろうとなった。彼の埋葬も我々の役目だ。

 清掃活動の報告として既に我々が回収したゴミは約900キロ。酸素ボンベ34本。昨年と比較すれば まだまだ遅れているもののサウスコルには酸素ボンベはないとのこと。しかし、変わりに昨年の登山隊が放置していったテントの残骸、そして今年大量に破壊されたテントの山。アタック隊が破壊された自らのテントの回収に余裕がないのは分かる。放置したくなる気持ちもよく理解できる。しかし、本当にそれでいいのだろうか・・・。昔の登山隊のゴミの回収には疑問を感じないものの、今現在の登山隊のゴミには悲しくなる。

 環境に対する意識がなかった時代のゴミと近年の登山隊がだすゴミは意味が異なる。さて、我々の活動がどこまで浸透するのか。嬉しいことに同じ日本からの東京農業大学の登山隊は上部キャンプからトイレを回収したり、太陽光を使用しお湯を沸かしたり、BCで流す排水口にまでフィルターを付けたりとさすが専門家集団だとその徹底振りと意識の高さに頭が下がった。チョモランマで「日本は文化・マナー三流」と指摘された97年。しかし、サガルマータの上部キャンプでトイレ回収を行なっているのは我々日本隊だけだ。

 明日からの上部での活動はこの4年間に及ぶ清掃活動の集大成として頑張ってきたい。


2003年5月8日
エベレストBCにて 野口健