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4月21日
■チョモランマBC入り


ラマ教による安全祈願
 いよいよ今日はチョモランマBC(ベース・キャンプ)入り。午前8時30分,シガール出発。朝からなんとなく落ち着かない。私にとってチョモランマは97年に敗北した痛い記憶がある。まったく勝負さえさせてもらえずに、ただただぼろ雑巾のように痛めつけられた。その苦く重苦しい記憶がいつまでも私にこびりつき、昨年念願のサガルマータ(エベレストのネパール語名)に登頂しても、スッキリせず、胸にポカーンと大きな穴が開いたままであった。サガルマータ下山中も頭の中はチョモランマ再挑戦の事で一杯であった。やはりチョモランマの借りはチョモランマで返さなければならないのかと、いつの日かリベンジを強く心に誓った。したがって私にとってチョモランマは特別な思いがある。それだけに今回は最終キャンプまでで山頂アタックはないと頭で理解しつつもチョモランマBC入りはグッと緊張感が体内を走った。

 2時、チョモランマBC入り。目の前にチョモランマがドカット構え、正直ビビッてしまった。いやはや、大変な所に来てしまった。そしてこの上なく耐えがたいのがチベット人女性こと「太陽」とここでお別れなのだ。6日間、行動を共にし、すっかり彼女あっての「野口隊」といった暗黙の了解が出来あがっていた。隊の核を失う我々は、なんともいえぬ悲しみに包まれたが、しかし、我々には大きな役目がある。いつまでもショボンと落ち込んでいるわけにはいかず、気持の切り替えを必要とした。

 彼女との再開を本格的に約束し、分れた。ここからは、山の世界だ。

 夜、雪が降り始め、あっという間に積もってしまった。夕食中、皆で「太陽」の思い出話をし、「太陽」の存在の大きさをたっぷりと感じていた。