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「世界最強といわれたアルピニストの死」

4月29日、世界最強といわれたアルピニストがサガルマータ(エベレストのネパール語名)で命を落とした。

彼の名はバプツェリン・シェルパ(36歳)

高所では「クレパス」という地表の裂け目があちこちに口を開けて(時には雪に覆われて)待ちかまえている。

彼は99年になんとサガルマータの頂きにテントを張り、無酸素24時間程すごし、サガルマータ頂での最多時間滞在記録を樹立。 一般にはわかりづらい挑戦ではあるが、無酸素で8848メートルに20時間以上過ごすのは人間の能力を超えており、そのニュースは世界中に発信された。 そして、次に彼が目指したのはBCから8848メートルの頂への最短時間登頂であった。 98年にパサンカジ・シェルパが21時間で登頂し世界記録を樹立したが、バブツェリン・シェルパはその記録をいとも簡単に更新した。 2000年春、彼は16時間でBCから頂に到達したのである。 そして彼はシェルパの英雄となり、ネパール人の誇りとなった。 

 

その彼が2001年4月29日、サガルマータのキャンプ2(6400メートル)付近で写真撮影中にクレパスに転落し死亡してしまった。 世界最強といわれたアルピニストの意外な死に方にネパール国民は唖然としてしまった。 私のシェルパ達も皆その表情を曇らせ「信じられない」と繰り返すのみ…。

 

連日ネパールのラジオはそのニュースを流し続けている。5月1日、ネパール国王の長男、つまり王子様がヘリコプタ−で現地入りしバブツェリンの遺体を引き取りカトマンズへ降ろしたそうだ。 おそらく国葬になるだろうとシェルパ達は話す。 世界最強のアルピニストでさえ、気を抜けばテント付近のクレパスに転落し亡くなる。ちょっとした小さなミスが取り返しつかなくなる。冒険とはそうゆものだろう。絶対はあり得ない。バブツェリンの事故を我々は教訓にしなければならない。

 

あと3週間、再度気持ちを引き締めて、清掃登山に取り組みたい。

2001年5月4日
ベースキャンプより 野口 健