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人間を怖がらない動物達





 ガラパゴスで驚いたのは野生動物たちが人間を怖がらないどころか、アシカなどは「遊ぼう!」とばかりに近寄ってくる。海で泳いでいると、一緒に泳ぎたがったりする。イグアナもペリカンも同じで我々が近づいても無視しているかのようにまったく我々のことを気にしない。砂浜では人とアシカが並んで横になりながら日向ぼっこをしている姿はなんとも微笑ましい。だからといって人から動物達に近づいていくとナチュラリスト・ガイドに注意される。あくまでも彼らから近づいてくるも!ということらしい。特にアシカやオットセイの子供には近づかないようにと厳しく注意された。人は安全だと教えなきゃいけないとのこと。近づいて見たい、それでもグッと我慢して動物達との距離を保つ。人の姿を見ても逃げようともしないのは、永年にわたりこの「人と動物達」とのルールをガラパゴスに訪れる人々が守ってきたからだろう。僕なんかはついつい近づきすぎて何度か注意されてしまったけれど・・・。

 渡り鳥の産卵地などでは「STOP」と書かれた看板があり、どの旅行者もその看板を越えて渡り鳥たちに近づこうとはしない。人と野生動物の間で守られてきたルールがガラパゴスの文化として根付いていることに感心させられた。それもナチュラリスト・ガイドがガラパゴスを訪れる観光客が理解できるまで丁寧に自然との接し方のレクチャーを行なうからだろう。そしてガラパゴスでのネイチャー・ガイドになるためには専門の大学などで動植物の生態系などの専門知識を身につけガイドの資格を取得しなければならない。そして、さらに凄いのが5年間現地ガラパゴスに住みながらガラパゴスの自然を研究しなければならない。つまり、ネイチャー・ガイドになるまで最低でも6〜7年かかるわけだ。誰でも簡単にネイチャー・ガイドになれるわけではない。ガラパゴスのスペシャリストがナチュラリスト・ガイドとして各旅行者に同伴しながら、説明を行なうのだから誰しもが納得するわけだ。実際に彼らに動植物やガラパゴスの歴史などどんな事を聞いてもすぐに答えてくれる。彼らの存在なくしてガラパゴスの自然保護考えられない。

 タンザニアのエコツアーでも感じたことだけれど、ここでは人は特別扱いされない。我々、人間もアシカやイグアナなどと同じで、そこに存在する生物の一種でしかないのだ。普段、我々はいかに自然や動植物に対して傲慢に生きていないだろうか、人も他の動物達と同様に地球上の哺乳類として生かされているにすぎないのだから、もっともっと自然や地球に対して謙虚になるべきじゃないだろうか。うまく表現できないけれど、タンザニアやガラパゴスで感じたこの気持ちが自然を守っていくうえで最も大切なことなんじゃないかと思えてならない。「人間も動物」だということ、そして動物には動物の世界のルールがある。都会の生活の中で本来の人としての姿を見失い、人間中心主義の社会を築いてきてしまった。その過ちを五感で感じさせてくれたのが僕にとって「エコツアー」だった。


2003年6月27日
野口健