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「ナイロビのゴミ最終処分所の視察〜JICAの取り組み・100パーセントのゴミ回収率を目指して〜」

ケニア、ナイロビに入った翌日、JICAケニア事務所に訪問。主にケニアでの環境問題への取り組みつついてご説明頂きました。そして午後は、JICAケニア事務所で環境分野担当の井上陽一さんとナイロビ市内にあるゴミ最終処分場への視察を行った。訪れたのは、二ケ所ある最終処分場のうちのメインの処分場でした。しかし、ナイロビ市では一日約1800トンのゴミが出ると言われているが、その内、最終処分所に運ばれてくるごみは約50パーセント。つまり半分ほどが不法投棄されているのだ。



 一面がごみの海



我々が訪れた46ヘクタールの最終処分所は小学校や住宅街に囲まれており、山積みになったゴミが自然発火し燃えたプラスチックが黒煙を上げたり、またゴミからメタンガスが発生したりしている。また、モンスーンとなれば雨水がしみ込みその辺りの井戸水にゴミの汚水が混じり、周辺住民の健康被害が大きな社会問題となっていた。



 次から次へと運ばれてくるごみ

そこでまずJICAの目標として、ナイロビ市内のゴミの回収率を2030年までに50パーセントから100パーセントを目指すこと。そしてこの住宅街に囲まれているゴミ最終処分所を2015年までに閉鎖し、2017年までに人里離れた地域に新たなゴミ処分所の建設を行うこと。

ナイロビ市環境局のキゴさんは「ゴミの分別を行う人も含め多くの人が健康被害に苦しんでいる。ナイロビ市内も不法投棄されたゴミだらけです。ゴミを運搬するトラックも足りていない。ナイロビのゴミ問題は深刻です。以前は、森の都ナイロビと呼ばれていたのが最近ではゴミの町ナイロビと呼ばれるようになった」と私達に話してくれたが、2030年までにゴミ回収率100パーセントを目指すJICAのプロジェクトが成功すればどれだけ素晴らしい事か。

それにしてもゴミ最終処分所では約1500人の周辺の住民やスラムの方々がゴミの山の中で分別を行っていた。ガラス、鉄、アルミ、などに分けてそれを売って生計をたてているのだが一日平均2ドル(日本円で約180円)の収入とのこと。



 ごみの分別を行う作業員たち



それにしてもあの埃まみれのゴミの山の中でマスクも付けずに一日中作業を行っていれば健康被害は免れないだろう。そして10,000〜20,000頭の豚がゴミの山に放牧され、ゴミをあさっては食べている。そして豚と共にハゲコウ(コウノトリの一種)がまるでカラスのように至る所から飛んできてはゴミをあさり、その中で人が作業を行っている光景にしばし呆然と声も出なかった。



 ごみをあさる豚の群れ





観光でケニアに訪れれば、まず訪れる事のないこの現場。国立公園などのいわゆる観光地がA面ならば、この処分所や不法投棄現場はB面である。B面から見えてくる社会もある。ネパールのカトマンズでもJICAがゴミ最終処分所を作り、ネパール社会に大きく貢献していたが、これからは「水問題」に「ゴミ問題」がさらに深刻になるだろう。人が生きている限りゴミ問題からは逃げられない。故に待ったなしの対策が求められているが、しかし、人類が続く限り永遠のテーマでもある。現場の世界で改めて「現実」を目の当たりにし考えさせられる事が多かった。
(2008年5月29日 カトマンズのごみ最終処分場 JICAの挑戦)





 しばし呆然としてしまった

それでも、救いであったのが、井上さんの「ナイロビの人たちもゴミ問題には関心を持ちつつあります。2030年までにはゴミ回収率100パーセントの街づくりは実現させたい」との自身に満ちた言葉であった。



 井上陽一さんと

明日からは一転してケニア山登山。20年ぶりのケニア山登山を楽しみたい。

2010年9月1日 ケニア・ナイロビにて 野口健