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一年ぶりのアフリカ、激し過ぎるアフリカ


草原を駆けるヌーたち アンボセリ国立公園にて

一年ぶりにアフリカに戻ってきました。今回も昨年同様に登山に野生動物の保護活動の視察、そして何よりもアフリカの大自然を全身で感じる事が最大のテーマ。またアフリカのA面、B面も探ってみたい。

  昨年、久しぶりにアフリカに訪れましたが、アフリカ大陸は色々な意味で良いも悪いもいちいち強烈。前回のケニア大統領選挙では暴動が起き、市民同士の虐殺が横行し市内の至る所に遺体が散乱していたそうな。また例えばナイロビ市内の大学生が暴動を起こし商店街を破壊し車に火を放し炎上させる大惨事があったが、日本では安保反対の学生らが学生運動を起こしたように何かしらの大きなメッセージがあるかと思いきや、なになに学食(食堂)の値上げに対する抗議だったりとか・・・。
>一人ポツンとダチョウさん,こいつが走ると速い速い


  またきつく注意されたのが「街中では決して走らないように」とのこと。理由を尋ねたら大人が走るという事は「逃亡」を意味しているらしい。つまり盗人などの犯罪を犯し逃げていると思われるとのこと。逃げていると判断されれば警官にその場で撃たれても文句言えないのだそうだ。昨年、夏、我々がアフリカに入る直前に実際にあった出来事として商店街を走っている男が盗人と判断されたら、警官ならまだしも周辺の人々がその男を捕まえ、トラックのタイヤを積み上げその中に男を入れ頭部だけを露出させた状態で、なんとそのタイヤの輪の中にガソリンを流し込み火を放ったそうな。その犯人とされた男は取り調べられる事も、反論の場も与えられる事もなく生きたまま焼き殺されてしまった。日本ならば大ニュースとなるようなこの事件はケニアでは小さなベタ記事で終わり。
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何故に通行人が群衆となってその男を殺したのか、アフリカに長年住んでいる日本人男性に聞いたところ「よくある話ですよ。正義感で犯人を捕まえているわけじゃない。貧富の差が激しいこのケニアでは失業者も多い。日頃の鬱憤(うっぷん)が爆発して、感情のはけ口としての犯行でしょう。でも、相手が犯人とされれば罪にも問われない。実際のところ本当に犯人かどうか分からないままなんですよ」とのこと。   その日本人男性も二度、首絞め強盗に合っている。この「首絞め強盗」とは何か。後ろから複数の犯人が襲いかかり首、つまり頸動脈を絞めてくる。20〜30秒も経たないうちに意識が落ちる。その間に身ぐるみ剥がされ靴からカバンから金目の物は全て持っていかれてしまう。彼がやられたのは白昼堂々、ナイロビ市内の交差点付近。背後から襲われ周囲に助けを求めるものの誰も助けてくれない。気が付いたら道路わきでゴロリと横たわっていた。もちろん、所持品はスッカラカン。二度目は自宅近く。おそらく帰宅のタイミングを狙われていたのだろう。「野口さん、背後から接近してくる人は気をつけてください。首絞めにやられますから。特に夜間はかなり気をつけてください。ナイロビに住んでいる僕らも夜は可能な限り出歩かないようにしていますから」とのご忠告を頂いた。   これだけ聞くと、我々日本人は「とんでもない国だ」と思うかもしれないが、しかし、日本が特別に安全なのだ。日本では夜の公園も女性一人が普通にジョギングしているが、アフリカに限らずアメリカのニューヨークだってそんな事は考えられないだろう。「やられる方が悪い」、これはアフリカではごく当たり前の発想だが、日本でそんな事を発言したら「加害者の味方か」「女性蔑視だ」などといった声が上がるかもしれないが、世界の多くはそんなもの。故に緊張感、危機感を抱きながら生活をしている。特に発展途上国で生活している人々には知らず知らずの内に防衛本能が備わっている。アフリカに限らずイタリアなどの欧州でも日本人旅行者がターゲットにされてきたのは危機意識の欠如ゆえのもの。

特にアフリカは欧州以上にこの防衛本能を明確に必要とするために、気持がピリッと引き締まる。この瞬間、嫌いじゃない。「善し悪し」を別にして、本能剥き出しのアフリカはある意味、極めて人間的、または本当の意味での動物的なのかもしれない。ただただ感情を爆発させる、そのエネルギーが音楽などの芸術に向けばアフリカの爆発的なダンスやジャズになるだろうし、違う方向に向ければフツ族、ツチ族の対立からルワンダの大虐殺までが象徴するかのような事態になる。何しろ、ビクトリア湖には流されてきた遺体がまるで浮草のごとくプカプカと浮いていたそう。非常に分かりやすいが、それが人間の本質なような気がする。僕らはその本能をオブラートに包んでいるだけで、実は心のひだの奥底まで探ってみればそう大差ないだろう。人間とはそういう生き物だ。

ゾウの群れに遭遇して(アボンセリ国立公園にて)

それがダイレクトに表現されるアフリカ、僕は好きです。先程からアフリカの魅力を伝えているつもりですが、きっとすごく伝わり難いですよね。弱肉強食は何も野生動物に限ったことではなく、ここでは人間社会も同じってことです。野生動物たちも、人間たちも五感をフル活動しながら一生懸命に生きているオーラを発している。そこかな。? そんな前置きはいいとして、今日はナイロビ郊外にある像などの野生動物の保護センターに訪れました。密猟などにより親を殺された像の子どもや、ワイヤーなどの罠に足を挟まれ身動きできなった野生動物たちが保護されています。密猟の主な原因はブッシュミート、つまり食用として現地の闇市で売られている。または毛皮や象牙などの外国人相手の商売。特に近年はアフリカに中国資本が急激に増え象牙を目的とした密猟が増えているそうだ。

保護された子どものゾウたち 

一気にこのミルクを二本をゴクリ
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  アフリカのレンジャーは日本のレンジャーとは訳が違う。日本とは違い密猟集団は武装している為に時にレンジャーとの間で銃撃戦となる。逮捕特権すら持っていない日本のレンジャーとここアフリカのレンジャーとでは違う。以前、マサイマラのレンジャーに取材をしたが、肩から自動操縦をぶら下げ、全身迷彩服の彼の厳しく、また冷めた眼光はレンジャーというよりもコマンドだった。そういえばCWニコルさんも以前はアフリカでレンジャーをやっていて、密猟集団と格闘し肩を負傷したそうだ。斧で襲いかかってきた密猟者に殺されかけたニコルさんは、得意の空手で相手の頭部を回し蹴りで一撃し仕留めたとご本人から聞いたことがある。「やるか、やられるか」厳しい現場で戦っているレンジャー達の「使命感」「正義感」、私はそこに感動する。そのニコルさんが東京都レンジャーの講習会で「君たち、手裏剣は持っているか。密猟者が現れた時には必要になるから手裏剣の練習はしておいてよ」と真面目な表情で真剣にレクチャーしている時には申し訳ないが横で吹き出してしまったが・・・。アフリカでレンジャーを経験した上での貴重なアドバイスでした。

保護されたサイが安心したのかスヤスヤと眠っていた

子どものゾウの表情はとても優しい。いつの日かこの子も野生も戻れるのだろうか。

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  それにしても、アフリカは一々、激し過ぎる。これからの旅がどうなっていくのか、楽しみ半分、不安半分。結局、エベレストと変わらないなぁ〜。あっ、そういえば忘れていましたが、今日は僕の誕生日だった・・・。そんな事はどうでもいいですよね。では、また。ジャンボ。


旅は始まったばかり


2011年8月21日 ケニア・アボンセリ国立公園にて  野口健