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6人のパパになった





 カトマンズに到着し、ホテルへ向かう車から町を眺めていたら いたる所に兵士や武装した警官が目に付く。そして道には投石した後なのか石や壊れたレンガが散乱していた。またマオイスト(毛沢東主義者)によるストライキかと思いきや、イラク戦争による石油価格の値上がりによる学生達のデモであった。そして、警官隊が学生に発砲し学生一名が死亡した直後だったのだ。このネパールも来るたびにだんだんときな臭くなってくる。国王の暗殺から マオイストのテロ活動など平和であったネパール社会に暗い影を落としているが、なかなか平和の兆しが見られない。

 カトマンズについてからは日本での睡眠不足解消のためにぐっすりと眠りこけている。3年前からカトマンズで診察していただいている「あんま」の先生に体を診てもらったが、背中と足の左右のバランスが良くないと二日間 じっくりとほぐしてもらったが、痛かった。 先にベースキャンプに入っている高畑隊員から連絡をもらったが、天候はあまり安定せず寒いとのこと。日本で桜が咲き気持ちのいい春を経験してきた僕には、先にネパール入りしていた高畑隊員や田附隊員が春を迎えないままヒマラヤにいるのがなんとも可哀想で申し訳なかった。衛星電話から聞こえてくる高畑隊員の
「こちらは寒いですぅ〜ハイ・・・」
の力ない声が心に沁みた。

 カトマンズ入りしてから2日目の夜に今年度からシェルパ基金で新たに学校に入学する子供たちとの食事会が開かれた。昨年は2名の子供たちが入学し、今年からはさらに4名が加わる。食事会ではシェルパ基金のネパール側のスタッフから
「ケンさん、これで6人のパパですよ!」
と声をかけられた。カチカチに緊張した子供たちの顔を眺めながら
「俺もまだまだくたばるわけにはいかないなぁ〜」
と「親」の責任の重さをひしひしと感じながらも、「パパ」と言われたことが、恥ずかしく、また嬉しくもあり、独身にして6人の子供に恵まれたことがこれからの自分の心に大きな支えとなっていくような気がした。子供達に救われことが多い。時間はかかったけれど永年のテーマである「シェルパ基金」を設立して本当に良かったし、これからが肝心だと身が引き締まる思いであった。

 ベースキャンプは4月20日入り予定。ヒラリー卿がエベレストに人類初登頂してから今年でちょうど50年目。50周年記念ということもありエベレストは大ラッシュ。ネパール側だけでも20隊を超えると言われている。賑やかなエベレスト、そしてまた大量に捨てられるゴミの山。さて、最後のエベレスト清掃登山はどうなるのか、楽しみ半分、恐怖半分。人生そのものです。


2003年4月11日
カトマンズにて野口健