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僕の見た「ラマダン」

このアフガニスタンとの戦争で、日本人はイスラム社会に随分詳しくなった。ついこの間まで「ラマダン」という言葉を多くの日本人は知らなかっただろう。しかし、最近ではよく新聞等でこの「ラマダン」という言葉を目にする。

僕がエジプトに住んでいた頃、親父と2人でラマダン期間中にレストランに行ったことがある。レストランに入ろうとしたら店の人に
「外国人証明書(パスポート)を見せろ」
と言われた。ラマダン中は外国人であるという証明書がないと日中はレストランに入れない。親父がうっかりしてしまいパスポートを忘れてしまったのだが、
「我々は外人だというのは見ればわかるでしょう」
とお願いしたが、店の人は
「ダメだ」
の一点張りでとうとう追い出された。
しかし、店内を覗くとサウジアラビアや湾岸出身のアラブ人が昼間から酒を飲んでいる。呆れて、店の人に
「彼らは、どうみてもイスラムだろう」
といったら、
「外国人だから文句が言えない」
と言われた。いやはや、「なんのこったちゃ!」と親父と2人で憤慨したのを覚えている。

さて、もうご存知かもしれないが「ラマダン」とはイスラム教の断食月のことであり、イスラム教にとっては本来神聖な行事であり、その期間中にアメリカが攻撃をすれば、イスラム社会からの反発が予想されると報道されている。実際に多くのイスラム諸国がラマダン期間中のアフガン攻撃を警戒している。

が、しかし、戦場のイスラム教の兵士には、断食の義務が免除されている。これは、ラマダン中の戦争行為そのものがイスラム教で禁止されているわけではないからだ。実際にイスラム教の経典であるコーランには、イスラム教が戦争を禁止している期間としてイスラム暦中の四つの月を挙げているが、それにラマダン月は含まれていない。そして、教祖のムハンマド自身もラマダン月に戦争をしたという。

ラマダン中になると多くのアラブ人(特にサウジアラビアや湾岸諸国の金持ち)が断食から逃れる為にヨーロッパや、比較的イスラム教の習慣の弱いエジプトに遊びに行き、飯を食い、酒をあおり、女まで買うわけだからあきれ果てる。

そもそも、貧困の人々の気持ちを分かろうと断食を始めたらしいが、僕が見てきたラマダンはお祭りそのものであった。太陽が沈めば町の至る所で豪華な食事会だ。食費も通常の何倍にもなるとか…。

だいたい、第4次中東戦争ではエジプトがラマダン中にイスラエルに攻撃を仕掛けている。イスラム同士のイラン・イラク戦争でもラマダン中に戦争状態が続いていた。

イスラムの人みずからがラマダン中に戦争を繰り返しときながら、今回のアメリカのアフガン空爆を
「ラマダン中だった」
批判しても、まったく説得力がない。

むしろ、イスラムという宗教を持ち出し、その宗教問題を都合のいいように利用しているとしか思えないアラブ諸国の姿が目に浮かぶ。

2001年11月23日
野口健