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地吹雪の下山





 午前7時 谷口・李・田附らがBCへ向けて下山開始。続いて8時30分に野口・高畑・ニマ・オンチュウが下り始める。夜中からエベレストの山頂付近からゴーという爆音が響き渡り、ほぼ一睡もできない永く辛い夜だった。途中、後ろを振り返るたびに雪煙を上げる山肌に「やばいぞ!」と急ごうとするのだが、4日間の高所での活動に気がつかないうちに疲れてしまっていたのか、なかなかスピードがでない。キャンプ1とキャンプ2の中間あたりから歩行が困難になるほど強風が吹き荒れ、ついには地吹雪となった。なかなか目も開けられずに風が通り過ぎるのをじっと待った。風が止んだその瞬間に一気に歩きまた爆音と共にやってくる風に耐えながら、次のチャンスを待った。手の感覚がなくなるほどに寒く、下山日を一日に間違えたかなと反省するも後の祭り。11時、キャンプ1に到着した時には、真っ先に我々のテントを探した。破壊されていないか不安であった。しかし、この時点では壊れていなかった。それから。休む暇もなくアイスフォール地帯へと逃げ込んだ。巨大氷柱がいくつも立ち並ぶアイスフォール地帯は風が直接ぶつかってくることはない。しかし、下から吹き上げられる風にはしごが浮き、これまた怖かった。午後3時過ぎBCに到着するが ヘロヘロに疲れ果て なかなか口も利けなかった。度重なるBCからの悪天候の知らせを聞きながら ギリギリまで上部で活動を続けてしまったことに反省。

 もう少しゆとりある計画を組まなければならない。遅れてエベレスト入りした焦りだったのかな。夜になると強風はさらにその勢いをまし BCのテントも吹き飛ばされてしまうのでないかと再び不安な夜を迎えた。翌朝、キャンプ1のテントが全て破壊されたとの情報が入った。自然の脅威の前に我々、人間の存在などまったく無力なものだ。


2003年5月3日
エベレストBCにて 野口健