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カトマンズでの記者会見





 26日、ハイアットホテルにて記者会見を行なった。清掃登山を始めてからカトマンズでの記者会見は7回目。記者達も顔見知りとなり、いつもアットホームな雰囲気で会見が行なわれるが、これで最後かと思うと感慨深いものがあった。2000年はじめてカトマンズで記者会見を行なった際は記者達から
「エベレストのゴミを拾ったらいくら儲かるのか?」
「エベレストのゴミを日本に持ち帰って展示するというがエベレストのゴミが日本では高額で売れるのか?」
など利益を生まない清掃活動にはなかなか理解を得なかった。しかし、この4年間 清掃登山の度に会見を開き 清掃登山の本意を伝え続けてきた。気がつけば外国の山岳関係者からの嫌がらせが行なわれれば「ネパールはケンの見方だ 頑張れ!」との声援が記者団の間からも寄せられた。そして「ケンのやっていることは、ネパールを変える ありがとう」と感謝されたりもした。

 最後の記者会見では7・7トンのゴミ回収を行なったが大切なのは今後のネパール政府の対応だと、ネパール政府のエベレストを含めたヒマラヤでの環境保護政策の必要性を訴えた。なかには入山規制が必要だと指摘する山岳関係者もいるが、一隊7万ドルの入山料金がネパール経済を支えているのも事実。マオイスト(毛沢東主義者)らによるテロ活動、アフガニスタンやイラクでの戦争、ネパール王族の暗殺事件、そして新型肺炎とここ数年間ネパールでは暗いニュースが続き観光客も大幅に減った。観光収入の激減がさらに貧困に拍車をかけ、このままいけば環境問題どころではなくなってしまう。「観光開発と環境保護」の両者のバランスを考えればエベレストなどでの入山規制は慎重に検討するべき。入山規制よりも登山隊などの受け入れ態勢の強化を図るほうが現実的である。例えば自分たちの排泄物の持ち帰りの義務(現在はBCのみ義務)、レインジャーによる上部キャンプの徹底したパトロール、違反者対する厳しいペナルティー、そしてゴミの持ち帰りへの理解を深めるために登山者へのレクチャーを徹底して行なうなど、世界遺産でもあるエベレストの環境保護の制度化の必要性などを伝えた。この4年間のエベレスト清掃活動が問題提議となり、ネパール政府が独自にエベレストを守る土台を築き上げれば 苦しかった活動が報われる。

 記者会見に同席されたネパール山岳協会会長のアンツェリン氏も私の意見同様にネパールが自分たちで世界に誇るエベレストを守っていくべきだと語った。一時間にも及ぶ記者会見では咳が止まらず大変だったが、語るべきことは全て語った。後はネパール政府にバトンタッチ。記者会見を終え、部屋に戻ったらこれで自分の責任は果たせたと一気に力が抜けてしまった。その後、ネパール山岳協会から感謝状を頂いたが、ネパール政府が大胆なエベレスト立法でも立ち上げエベレストの環境保護を世界に訴えれば、そのことがなによりもの僕への感謝状となる。今後のネパール政府の対応を見守りたい。


2003年5月26日
カトマンズにて 野口健