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「2005年、断食からのスタート」

 今年はシシャパンマへのリベンジの年。2年前、6000m足らずで吐血し意識を失いシェルパ達に救助されたあの峰。なかなか再挑戦の時期が決まらないまま、ズルズルと引きずっていただけに決まってホッとしたと同時に身の引き締まる思いだ。出発まで残り4ヶ月。どのように過ごすのか、とても重要だ。昨年はなにかと目まぐるしくトレーニングに集中出来なかった。秋にやっとヒマラヤでのトレーニングが実現し、5年ぶりにヒマラヤの頂にたった。6000m峰ではあったけれど、どんな山でもそのテッペンはやっぱりいいね。気持ちがいい。正直、体力の衰えは明らかだった。また、呼吸気管の弱さには相変わらず。ただ、弱点が見えればその部分をトレーニングや健康管理等で補っていけばいいわけで、そう悲観的になることでもない。とにかく、2年前のあの失態を繰り返さないこと。これがなにより大切。
 元旦には靖国神社でシシャパンマへのリベンジを報告し、無事に登頂できるように祈願した。神頼みはここまで。後は自分自身の問題だ。1月4日から伊豆の伊東の山中にある断食が行う保養所に入った。昨年5月にも行ったのだが、10日間、ヒポクラテックサナトリウムというこの施設で断食生活を送りながら昼間はジムやプールに出かけてトレーニングを行う。空腹の中でのトレーニングはなかなかハードだが、ヒマラヤなどでの高所では酸欠状態となり血行障害や、内臓の機能低下などで食欲が激減する。例えお腹がすいていても胃袋の機能が低下していれば食べてもすぐに吐き出してしまう。また高所で食べ過ぎると血液が胃袋に集中してしまい、脳が酸欠状態になる。つまり高所では食べ過ぎてはいけないのだ。それでいながら、あの運動量では痩せこけて当たり前だ。エベレストに登頂したときは10キロ以上も体重を落とした。お腹がすくと体が動かなくなりバテやすくなるがそれでは困る。断食し、空腹の中でどこまで体を動かせるのか、これは登山家の先輩でもある小西博文さんが以前に取り入れていたトレーニング方法でもある。
 
 さすがに断食4日目からの水泳は泳ぎながら頭がふらつくのが分かる。水分補給し、黒糖の粒をなめる。すぐに血糖値が上がり、頭がシャキッとする。そしてまた泳ぐ。その夜は一気に宿便がでた。激しく運動したから予定よりも早く排出され、体がスッキリ。しかし、8日目を過ぎたあたりから立ちくらみが酷くなり、水泳中に体が軽くなっていき、1時間以上泳ぎ続けていても疲れないどころか妙にフワフワと気持ちがいい。そして目をつぶったまま半分、無意識に泳いでいたので横の壁や水泳中の他の人に何度もぶつかってしまった。これはやばいと黒糖の塊を口に放り投げるものの、なかなか回復しない。そして頭痛。部屋に戻り横になるが、天井がグルグルと動いているような妙な感覚。昼寝したら夢の中でラーメンや寿司を食べていて、覚めたらなんと口の中にシーツが入っていた。寝ながらシーツを食べようとしていたのだ。食べないままトレーニングを続けると人はおかしくなることが分かった。
 そのような状況でも何とか無事に10日間の断食とトレーニングを終わることができた。
 辛くなかったと言えば嘘になるが、あれだけフラフラになりながらもよく体が動いた。また、極度の空腹感にもなれ、精神的にはストレスを感じなくなっていた。慣れとはすごいものだ。今では心身共にリフレッシュしとても爽やかな気持ちだ。体重は6キロ減。だいぶ軽くなったが、さらに絞っていきたい。断食明けからすぐにアフリカに飛んでしまうが、帰国してから再びトレーニングを開始したい。シシャパンマ再挑戦まで残り3ヶ月。あらゆる限り、出来ることは何にでもトライしたい。

2005年1月13日 ヒポクラティクサナトリウム528号室にて 野口健

2004年の断食(一回目)「断食生活からのある気づき」