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  ヒマラヤとベビースターラーメン



 冬のエベレスト街道はシーズンオフでトレッカーや登山隊も少なくとても静かです。ちょっと風が強く寒いですが、人間っていう生き物はちゃんと環境に適応するようになっているんですねぇ。ヒマラヤではよく仲間たちに「けんさん、寒さに強いですね」と驚かれる。確かに7000mぐらいまでは薄いダウンジャケットで登ってしまうことがある。別にやせ我慢しているわけじゃないですよ。しかし、これが日本に帰ってくるとストーブの前から離れられなくなる。特にコタツが大好きで一日中マン丸になって入っていたい。そしてこれがまたよく東京で風邪をひくんです。

左奥のピークがエベレスト

なかなか決まってますねぇ

 「ヒマラヤで大丈夫だった人がどうして東京でそんなにしょっちゅう風邪をひくの」と言われたりしますが、そんなこと聞かれたって意識的に、または意図的に風邪をひいているわけじゃないので分かりません。ただ1つ言える事は日常生活にはいくらでも避難場所がある。寒ければ室内に逃げ込んでしまえばいいのだ。故に寒さに対して腹をくくれない。覚悟を決められない。だからすぐに風邪をひくんじゃないかなぁ〜と。気持の問題でしょうか。

 ヒマラヤ遠征が始まってしまえば暖かいところが少ない。特にテントの中は火器を使用して時は暖かいもののすぐに酸欠になるので火を止める。火を消した瞬間にキーンと冷える。標高にもよりますが、テント内でもマイナス10〜20度まで下がったりします。朝起きたら寝袋の口の周辺が吐く息によってバリバリに凍っていたりする。寝袋の中でマン丸になっていても寒いものは寒い。時に体を擦り、またモジモジと寝返りをうっては体を温めるものの限界がある。ヒマラヤ遠征がスタートし前半はその寒さに堪えますが、一月もするとどうあがいても暖かいところがないわけで、つまり寒さに対して諦めてしまうんでしょうね。寒さを受け入れるしかないわけです。自然の中で生きていくということは受け入れるということです。

冬のヒマラヤは大気が不安定

シェルパ族最大の村・ナムチェバザール

  日ごろ、私たちは人間の都合に合わせて生活している。時に自分の都合であったり、相手の都合であったり。その調整の日々が日常生活です。しかし、相手が自然となると決してこちらに合わせてくれない。いかなる状況下に於いても人間が自然に合わせなければならないだ。登山に於いては自然と戦うという気持ちは落とし穴となる。

 よく欧米人の中には自然に対して「制覇」だとか「征服」だといったような表現をされる方を見受けしますが、自然は制覇するものでも征服するものでもないし、そもそもそんな大それた事などできません。ヒマラヤの大自然の中にいると人間の存在がいかに小さいかが分かるものです。それだけに人間同士がチビチビと争い、戦争を繰り返している姿が滑稽にさえ感じるものです。



撮影しながらテクテクとゆっくり歩く

けっこう足が長い?

  今日はナムチェバザール村からクムジュン村へ移動。明日はパンボチェ村を目指します。平賀カメラマンは「ケンさん、エベレストがよく見えますよ!今日は撮影日和ですね」とハイテンション。撮影しながらゆっくりと登るのでこれが高所順応にいい。一気に登ればどんなにヒマラヤ登山のベテランであろうがポクっと逝ってしまう。慎重に標高を稼がないと危ない。

 久しぶりにエベレストと再会した瞬間に「あ〜俺は帰って来たぞ!」と思わず大きな声を出していました。やっぱり僕にとってエベレストは特別な聖地。昨年はこの聖地を踏みにじられた。だから本気で怒っていた。最低でも一年に一度は里帰りしないと落ち着かない。このエベレスト街道にももう40回弱訪れています。よく美人は三日で飽きると言われますが、エベレストは何十回見ようが一切飽きない。飽きないどころかその度に新たな発見があります。これは凄いことです。

 余談ですが、僕には「美人は三日で飽きる」と言われている意味が全く分かりません。許されるのならばいつまでも眺めていたいものです。たまに街中で眺めすぎて不審者扱いされスタッフに「野口さん、もっとさりげなく見てくださいよ」と注意されたので仕方がなく、指の間から眺めていたらもっと怪しかったそうだ。かといってサングラスかけて見るのは潔くないし。見たいものは堂々と見たいわけで、見るなといわれたらもっと見たくなってしまう。あ〜困ったものです。

 そして今日の記事のタイトルであります「ベビースターラーメン」ですが、平賀カメラマンは「ベビースターラーメン」命でいつ何時においてもベビースターラーメンを持ち歩いている。カメラよりもベビースターラーメンを手に持っている時間のほうが長かったりして。どれだけ好きかと言うと、わざわざエベレストの山頂にまでもってきて、山頂でポケットから取り出しているので、「こんな所で食べるつもりか!」と驚いてみていたら、なんと自分で自分にカメラを向けてベビースターラーメンと一緒に記念写真を撮っているではないか。一緒に登った相方の僕よりも先にベビースターラーメンと記念写真を撮る彼の精神構造を分かりかねたが、ただ1つだけ分かったのは彼がベビースターラーメンを心から愛しているということである。確かに平賀カメラマンからよく分けて貰って頂くが、あの昔から一切変わらない味は飽きなくていいですね。いつの間にか僕までベビースターラーメンが好きになり気がつけば自身で買うようになっていました。

ベビースターラーメンと平賀カメラマン

今日はそんな平賀さんとベビースターラーメンをヒマラヤバックに愛のツーショットを撮影してやりました。なかなかの腕前でしょ。これでも中学・高校生時代は写真部です。卓球部に写真部に、そして大学からは山岳部、これ完全に裏街道まっしぐら? 

2009年1月8日 クムジュン村にて 野口健