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野口健からのメッセージ

 
「ベースキャンプにて神頼み」


相変わらず夜は雪下ろし、雪かきで熟睡できず。昨夜もあまりの雪にテントが潰れてしまうのではないかと不安な一夜でした。朝は雪がやみ少しだけ青空が見え歓声が上がる。太陽が出ているうちにシェルパのダワタシと一緒に洗濯。とっ、その時、突然、レスキューヘリがベースキャンプに飛んできた。聞けばサマ村で一緒に過ごしていたイタリア隊員が足を負傷し救助されたのだ。ヘリに乗せられ、あっという間にカトマンズに向けて去っていく様子に「いいなぁ、あいつは命拾いしたなぁ〜一時間もしないうちにカトマンズかぁ〜」といったような声が聞こえてきたような気がしたが、なんのことはない、情けないことに声の主は自分であった。

ベースキャンプ全景

洗濯屋のけんちゃん?

そして昼はお隣の韓国隊を招いて昼食会。キムチ鍋の元を日本から持ってきていたのでキムチ鍋をご馳走したら「日本人に韓国料理をご馳走になるなんて!」と大そう喜んでくれた。ヒマラヤに来る度に韓国隊と仲が良くなる。李さんともエベレスト清掃で一緒に活動したり、気がつけば96年のチョーオユー登山からずっと韓国隊とのお付き合いが続いている。それにしても韓国隊の勢いは凄まじい。この春もネパールにある8000メートル級の山、全てに韓国隊が入っているとか。8000メートル14座全てに登頂した韓国人登山家は3名(ちなみに日本人はゼロ)。そして韓国隊は若手が目立つ。日本では山岳部離れが進み、ここヒマラヤにおいても日本隊といえば60歳以上がメインとなっている。それはそれで凄いことですが、やっぱり若手が極めて少ないのが寂しい限りです。日本人と韓国人とではガッツが違う。「気合い」という表現は日本ではもう古いのかもしれないが、今の日本にこそ必要な言葉ではないだろうか。

韓国隊とのお食事会



龍さんのピッケルと共に 

午後に突然、サマ村からお坊さん二名がこの雪道の中、ベースキャンプに上がってきた。わざわざ、我が隊の安全祈願のために。雪が降る中、ブルーシートで屋根をつくり安全祈願が行われた。千数百メートルを登ってくるのはさぞかし大変であっただろうに、本当に頭が下がる思いだった。サマの村人は本当に親切だ。これでカトマンズを含めると3回目の安全祈願。日本を発つ直前に靖国神社でも安宣祈願を行ったし、やるべきことはやった。

ベースキャンプでの安全祈願

ベースキャンプの周辺では雪崩のドドドーとまるで爆音のような音が一日中響き渡っています。今もテントに打ち付ける雪の音を聞きながらこのブログの原稿を書いています。これがマナスルなのでしょう。焦ったところで、どうにかなるわけでもなし、まあ〜気長に構えるしかないです。こうゆう山で焦りは禁物。下手に突っ込むと雪崩で持っていかれてしまう。流れが変わるまでジッと待つ。忍耐力が必要となりますが、こんなこともあろうかと日本から小説など本を何冊も持ち込んでいるので天候が回復するまでは気長に本でも読むことにします。日本にいてはあり得ない時間の過ごしかた。考えてみたら好きなヒマラヤでのんびりと読書、これ最高の贅沢じゃないですか。さてと、トルーマン・カポーティの「冷血」でも一気に読むとしますか。

2009年4月17日 マナスル・ベースキャンプにて野口健