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5月21日
■ABCからBC

 今日も、風が強く、最終キャンプでアタックを待機していたアタック隊が登頂を諦め下山を開始。ABCから双眼鏡で彼らの姿を探すと、稜線に座り込み、雪が舞う中、グッタリしている人の姿が見えた。最終キャンプからの脱出は、我々の想像を絶する過酷な世界がそこでは展開されたんだろう。彼らの姿が全てを物語っていた。

 ABCからBCへと下りる前にラッセル・ブライス氏に挨拶したが、ラッセル氏はしきりにABCのトイレの問題を口にしていた。結局、ABCで排泄物をBCへと下ろしたのがラッセル隊と野口隊のみであった。約500人の人々がこのABCで生活を送ったが、その彼らの糞は半永久的にこの地に残る。このままの勢いで糞が増えつづけると5年もしないうちにこのABCはキャンプ地としての機能を失うとラッセル氏は懸念していた。

 また、このABCの下を流れる氷河は、そのままロンブクの村人の生活水となる。我々がこの氷河を汚染すればこの氷河の水で生活を送るロンブクの民をこの地から追い出すことへと将来的につながってしまう恐れがある。我々、異邦人にはそのような権利があるはずもなく、やはり、登山という娯楽で人の地に訪れている以上、責任ある行動が求められるだろう。