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野口健、エコツアーを旅する ―ガラパゴス編1―



ガラパゴス事始

 2003年6月22日、4度目のエベレスト清掃登山から帰国して3週間後、今度は常夏の島ガラパゴス諸島へと飛び立った。健さん曰く、エベレストという寒くて高いところにいたのだから、今度は暖かくて低いところへ行く必要がある!生命のあふれるところに行こう!と言って旅立ったのだが、そもそもガラパゴスへ行こうという発想はタンザニアでのエコツアーの日々の中から生まれたものだった。日本の国立公園のあり方について悩み考えていた頃、ちょうどテレビ局の企画でタンザニアのエコツアーを見に出掛けることになったといういきさつがある。

 最近、日本でもあちこちで行われている「エコツアー」。でも一体「エコツアー」って何なんだろう?私たちと「エコツアー」の最初の出会いはタンザニアの国立公園・自然保護区であった。アフリカの炎天下、レンジャーとガイドと動物たちの王国を歩きながら、干からびそうになりながらも何か重要なものを体が感じ取っていた。自然と文化と人間の共存について、考えずにはいられない時を過ごしたのだった。タンザニアでの2週間のあいだに体は疲れきっていたけれど、新しいエネルギーが沸々と湧いてきた。

 世界中の国立公園がどんなふうに管理され、より理想的に自然と人間が共存している所がどこなのか、もっと見てみたい。特別な人間だけが国立公園や自然保護区を管理することにとどまらず、より多くの人とそれを共有し、理解し合えるからそこに未来があるのだと思う。その、理解・共有の場が「エコツアー」なのではないかと私は認識している。それが、健さんがこれからやりたいこと。

 日本では、まだ生まれたばかりの「エコツアー」と言う言葉だが、調べてみると世界中に「エコツアー」はあった。ならば既存のそれを見にいこう。いいことも悪いことも、きっとそこにはいろんなヒントがあるに違いない。


ガラパゴス・・・ダーウィンの進化論が生まれた楽園が今もそこにある・・・

 1835年、イギリス軍艦ビーグル号に乗ってこの島にやってきたチャールズ・ダーウィンによって、のちにこの自然と生物が世界に紹介されることとなったガラパゴスは、エクアドルという南米の国だということをどれだけの人が知っているだろうか。

 エクアドル。その名が示すとおり、この国は赤道直下にある。そして16の島からなるガラパゴス諸島も、もちろん赤道直下だ。しかし驚くべきことにこの諸島には、極地にしか生息しないはずのペンギンがいる。その不思議は、ガラパゴスの気候を大きく左右している海流にある。南氷洋から発する冷たいフンボルト海流の北上によって、ガラパゴスに冷たい海流が流れ込み、年の平均気温は25℃を上回ることは無いという。

 ガラパゴスには、固有種・亜種の生物がたくさん生息している。外部の生態系から長い間隔離されたために、独自の進化をとげた結果なのだ。私たちは、この諸島に滞在中、ダーウィンの「進化論」を何度も実感することになった。

 ガラパゴス諸島で最も驚いたこと、これまでの人間vs動植物との関係における無意識の常識が覆されたことがある。ナチュラリスト・ガイドに付いて島に上陸すると、動物は人間が近寄っても、まったく逃げようとはせず、まるで私たちの存在を無視するかのように、平然と日常行動を続けている。ここでは、全ての生の存在が当たり前に平等なのだ。だれもお互いを干渉せず、自らの生をのんびりと楽しんでいるに過ぎない。こんな当たり前のことに気付かせてくれた土地は今まで無かった。エゴイズムの塊の人間が、これからの地球と共に生きていくための本質的なものが、ここにはある気がする。





2003年6月29日
ガラパゴス諸島にて 谷口ケイ