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野口健、エコツアーを旅する ―ガラパゴス編 2―






世界の国立公園の見本へ

 私たちは、ガラパゴス諸島滞在の大半をクルーズ船上で過ごした。というのは、ガラパゴスは島のほとんどが国立公園のため勝手に上陸することはできず、かならずナチュラリスト・ガイドと一緒に行動しなければならないことと、ガラパゴスにはたくさんの島があり、各島に固有の動植物が生息しているため、より多くの島に訪れるには、クルーズ船での「エコツアー」に参加するのが最もいい方法なのだ。

 ガラパゴス諸島のほとんどの部分は人が住んでいない。16ある島のうち、宿泊施設があるのは2ヶ所だけ。そして島から島へは結構な距離があり、一日では遠くの島までは辿り着くことができない。

 これらの理由によって、ガラパゴスを訪れる人々の多くがクルーズ船でのツアーに参加することになる。自分勝手な判断で「自然」に足を踏み入れることはできない、これが理解と共存への第一歩なのだろう。

 今回私たちが乗った船には、60人のお客が乗り込んだ。4つのグループに分けられ、各グループにナチュラリスト・ガイドが専属で付く。島に上陸する時は、必ずガイドに従っていく。船上では毎日、ガイドによるブリーフィングが行われる。その日の振り返りと、次の日の予定や動植物の話、島の形成の歴史や性質、そして私たちが注意しなければならないこと等。


Rules are made for Everyone for Future!

 クルーズ船に乗船した日、まず最初のブリーフィングが行われた。最も基本的なことで、最も重要な、ガラパゴス国立公園のルールについての話だ。いつもにこやかなナチュラリスト・ガイドのマリさんが、何度も厳しい口調で禁止事項を繰り返した。きっぱりとした、とても厳しい態度だった。その厳しさから、彼女が本当にここの自然を愛しているのだなと思うと同時に、私たちとそれを共有したいのだという、一生懸命な想いが伝わってくるのだった。

「ルールは、あなたたちを煩わせるためにあるのではなくて、皆と皆の未来のためにあるのよ。ここにいる全員が、楽しむことが重要なの。」

No Smoking 絶対禁煙。1985年の大火事で生態系に大きな影響が出た。
No Alchohol 絶対禁酒。
No Flash Photo 写真を撮る時にはフラッシュ禁止。動物たちが驚いてしまうから。お互いに干渉しないこと、これが最も大事。
No Passing Guide 島では必ずガイドの後ろを歩く。指定された範囲から出てはいけない。
No Throwing Garbage もちろんゴミ捨て無用。ゴミがあったら拾おう。
No Food to National Park 絶対に食物を持ち込まない。
No Collecting 動植物、葉っぱ一枚も小石一粒も持ち出さない。
No Touching 何ものにも触ってはいけない。毒をもっているかもしれないし、触ることで私たちの手についている菌を島に残してもいけない。
No Pee おしっこもうんちもしてはいけない。人跡を残してはいけない。

 厳しく禁止事項を言った後、必ずマリさんは『Because this is National Park!』と言った。「国立公園なのだから・・・」この言葉に健さんはひどく感慨深げだった。今の日本で、「国立公園」という言葉にどれ程の威力があるというのだろうか。国立公園だから、何をして良くて、何をしていけないのか、その約束事をどれだけの人が認識しているだろうか。そもそも、日本において「国立公園」ってどこにどれだけあるのかってことを、知っている人はどれ程いるのだろうか。




2003年6月29日
ガラパゴス諸島にて 谷口ケイ