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野口健、エコツアーを旅する ―ガラパゴス編 3―




島から島へ

 空港と港があるのはバルトラ島。この小さな島は国立公園の範囲外だ。一般の人は住んでいないが、エクアドル海軍の基地がある。ガラパゴス諸島は基本的に全てが国立公園なのだが、港と街――人のいるエリアはその範囲外だ。

 バルトラ島を出航して、まず私たちが最初に立ち寄ったのがバルトロメ島。ここで初めて、ガラパゴス諸島が火山活動によってできた島だということを知る。そして、植物が明らかに少ない。まるで、火星かどこかのイメージだ。茶色の溶岩地帯と、灰色の火山灰、地に這いつくばるように生えている植物までもが灰色だ。今は乾季なので特別そうなのかもしれないが、水が無いためと火山灰のために植物が白くなっているのだそうだ。溶岩でできた島なので、もちろん川など無いし、地中の水というものも存在しない。つまり、ここに生息している植物は奇跡的な進化をとげたということだ。雨季にたっぷり水を吸い、乾季の今は動物でいってみれば冬眠中のようなものらしい。無駄なエネルギーを使わないよう、活動中止しているのだ。

 そしてここには、「尾瀬の木道」のようなものがあった。島には人が歩いていい場所として、決められたトレイルがあるのだが、このバルトロメ島の一番高いところ(114m)へ通ずるサミット・トレイルには、環境保全のために365段の階段が設置されている。ただでさえ風化が激しい溶岩の島、このような階段が無かったら、今ごろこの島の頂上の標高ははるかに低くなっていたに違いない。

 島の砂地の高台が、マングローブ林になっていた。どんな満潮になってもその高さまで海水が来ることは無いという。つまり、ここのマングローブは砂地中深く根を伸ばして、地中の海水を吸って生きているのだ。私が今までに見た、西表島やザンジバル島のマングローブは、少なくとも満潮時には海水に浸っていたはずだ。水の少ないこの土地で、ここのマングローブは、生き延びるために一つの種に至ったようだ。

 この島ではシュノーケリングもした。ダイビング好きの健さんは、冷たい水にもかかわらずスイスイと潜っていった。小さなビーチなのに、ビックリするほどたくさんの魚がいた。かき分けて泳がなければならないほどの数だ。大きな魚が小さな魚を狙っている。海ガメもスイスイ泳いでいる。海の動物たちも、そこに人間がいても全く動じない。共にいるのが当たり前かのように、自分達のペースを守っている。ビーチスイミングやシュノーケリングもエコツアーのプログラムの一部なのだ。

 クルーズ船と島との間は、パンガという小船に乗ってグループごとに移動する。グループは15人づつ、4つに分けられていて、Albatross(アホウドリ)、Boobies(アオアシカツオドリ)、Cormorants(コバネウ)、Dolphins(イルカ)というように、ガラパゴスの生物の名がつけられている。私たちはCグループだ。

 各グループにナチュラリスト・ガイドがついていて、Cグループはマヌエル。かっぷくのいいアニキで、聞けば何でも教えてくれる。

 島から船に帰ってくると、足に付いた砂を水で全て落とさなければならない。一つの島のものを別の島に移動させることは決して許されない。例え砂一粒でも。

 自分だけなら、とか、ちょっとくらいは、といった行為がここの自然を破壊してしまう一歩になってしまうのだ。




2003年6月29日
ガラパゴス諸島にて 谷口ケイ