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野口健、エコツアーを旅する ―ガラパゴス編 4―







動物たちとの出会い

 クルーズ2日目、イサベラ島とフェルナンディナ島を訪れた。もちろんどちらも溶岩でできた島だ。ここで驚くほどたくさんの動物たちとの出会いがあった。ガラパゴス諸島の多くの地で出会うことができ、最もキュートで健さんのお気に入りとなったアシカ達が、イサベラ島の入口で迎えてくれた。海から上がってきて、浜でごろごろ日向ぼっこをしているのだ。警戒心というものは全く無いようだ。

 アシカの横には、我らがグループCormorant(コバネウ)の巣があった。開けっぴろげな巣の中には子供もいた。このコバネウは飛べない鳥で、退化してしまった羽根はとても小さい。見るからになさけない姿に、初め健さんと私は失望した。だって自分達のグループ名の動物がこんななさけない姿の鳥だなんて!しかし、コバネウは貴重な種なのだ。世界で唯一の飛べない鵜で、ガラパゴスに来て現在の姿に進化した動物のひとつだ。この島には天敵がいないこと、そして強力な脚力を持っているために、海中に潜って魚を採るのに苦労しないこと、だから空を飛ぶ必要がなくなってしまったのだ。こうしてコバネウは進化(羽根が退化)し、現在の姿としてここに存在している。ガラパゴスコバネウは、国際自然保護連合の指定する絶滅危急種のひとつだ。

 また、島の中にはたくさんのダーウィンフィンチが生息していて、あちこちに巣を見ることができた。この鳥は、オスがいくつもの巣を作り、その巣を気に入ったメスがそこに住み着くという、鳥の世界の弱肉強食のようであった。

 島の岩壁沿いをボートでゆっくり巡ると、いるいる、あちらこちらに動物たちの世界が広がっていた。ボートの周りをゆらりゆらりと泳ぐウミガメ。アシカ。頭上を優雅に舞っているサギの仲間やアオアシカツオドリ、タカ。水際にはウミイグアナとアシカが共に昼寝をしている。そばにはガラパゴスペンギンもいる!

 ガラパゴスペンギン。ナチュラリスト・ガイド曰く、世界最小のペンギンだ。確かに小さい。この赤道直下にペンギンが生息しているのは、冷たい海流のせいなのだが、80年代のエル・ニーニョの影響でその数は一時激減してしまったらしい。今では500頭くらいになったけれど、溶岩流の陸に彼らの足ではツルツル滑って上りにくいらしく、その頭数はなかなか増えないのだそうだ。このペンギンは、国際自然保護連合の絶滅危惧種として、生物種レッドブックに指定されている。

 ウミイグアナ。恐竜の生き残りのような様相のこの不思議な生き物は、陸に上がると岩と同じ色になり、ボーっとしているとそこに彼らがいることに気付かない。踏みそうになってよく見ると、折り重なるようにしておびただしい数のイグアナたちが日向ぼっこをしているのだ。じっと空を見つめて動かない。時々、鼻孔から水を噴出す。そして時々、のっしのっしと歩き出す。全く不思議な生き物だ。見かけは恐ろしい様相だが、世界唯一の海藻食イグアナで、おだやかな性格のようだ。アシカと日向ぼっこをしている姿を良く見かけた。

 乗船3日目は、サンティアゴ島とラビダ島を訪れた。サンティアゴ島では、2種類(パホイホイ、アア)の溶岩大地の大きな違いを目にした。ガラパゴス諸島の溶岩は、ハワイ島の溶岩と同じ種類のようで、「パホイホイ」と「アア」はポリネシア語なのだそうだ。粘性の低い溶岩が速い動きで流れながら固まった時にできた「アア」溶岩は表面がささくれ立っているのに対して、「パホイホイ」溶岩は、粘性が低い溶岩がゆっくりと流れながら冷え固まったもので、島の周囲や海岸近くに浜をつくり、アシカやイグアナたちの絶好のお昼寝ポイントとなっている。

 サンティアゴ島には、アシカの他にオットセイがいた。たくさんのアシカやオットセイがあちらこちらにゴロゴロしているのを踏まないようにして歩くが、どうにもこうにもアシカとオットセイの違いをなかなか見分けることができないのであった。ただ一つ確信したことは、アシカのほうが人なつっこく、茶目っ気があるということだ。アシカが大のお気に入りの健さんは、どこの島に行っても飽きることなくアシカを眺め、話し掛けたり、ビデオを撮ったり余念が無かった。ガイドのマヌエルは、健さんが子アシカに近づきすぎないよう、いつも目を光らせていなければならなかった。ご迷惑をお掛けしました。

 午後に上陸したラビダ島は、レッド・ビーチという名のとおり赤砂の海岸線だ。青い海に赤い砂浜。これまで訪れた島々は灰色か黒、茶ばかりだったので、久し振りの色彩に何やら妙に感動してしまった。木々は例のとおりに灰色なのだが、そこに緑のサボテンがまた色を作り出してくれていた。「色」って人間の視界に必要なものなのだな〜と実感させてくれる島だった。

 この浜のソルトブッシュ(海水で生きている植物)の茂みには、たくさんのブラウンペリカンの巣があり、生後一ヶ月もたっていない子供ペリカンたちが一生懸命餌を食べる姿があった。ペリカンの餌袋って不思議だね〜、と健さんはじっと眺めつづけ、またガイドの足を止めてしまうのだった。




2003年6月29日
ガラパゴス諸島にて 谷口ケイ