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パン屋と銃声

ナムチェバザールにあるパン屋さん
ナムチェバザールにある基地。ナムチェバザールの全貌を見下ろす位置にあり、おそらくここから発砲されたハズ
エベレストビューホテルでの食事風景。例年だと多くの日本人がいるのだが、今年は貸切状態だった
クムジュン村の入り口にて。この村は夜間に出歩いても発砲されることはないらしい

 ナムチェバザールに着いた4月6日の夜、喉に違和感を覚えたため、風邪薬を飲んで8時過ぎには寝袋に潜り込んだ。うとうとしていたら、いきなり
「パン、パン、パン・・・・・・パン、パン」
と銃声が鳴り響いた。飛び起きて慌てて窓の外を覗いたが、真っ暗闇でなにも見えない。ヒマラヤの山々にこだまする銃声音。誰が撃たれたのか、それとも威嚇射撃なのか・・・。

  いずれにせよ、銃は発砲されたのだ。その後は物音ひとつしない沈黙の世界に再び戻っていったが、なかなか寝られなかった。世界の屋根、ヒマラヤも人の争いの場になっている。

  ゴミ問題もしかりだ。地球上のいたる所が人間の手によって汚染されていく。人間は一体なんなのか、どこへ向かおうとしているのか、つくづく「哀れだな〜」と考えさせられてしまった。

 翌朝は何事もなかったようにいつも通り始まった。シェルパ達に昨夜の銃声の事を聞けば、
「よくあることだ。」
とすっかり慣れてしまっている様子。感覚のマヒだ。腑に落ちないままパン屋へ朝食に出かけた。最近できたパン屋。3440メートルにパン屋がある。10年前始めてナムチェバザールに来た時にパン屋など想像もできなかったが、今ではインターネットカフェさえある。シェルパ達の家でもDVDで映画が見られたりする。どこまで発展していくのか・・・。素朴のままでいてほしいと思う。しかし、そのように思うのも先に発展してしまった我々のエゴなのかもしれないが・・・。

 朝食後、一緒にエベレストに登頂し、その後は清掃登山でシェルパ頭補佐を担当するニマ・オンチュウの家があるクムジュン村(3780メートル)へと向かった。途中、日本人が経営するエベレストビューホテルにより、昼食をとるが、これがまた凄い。チキンカレーを注文したが、フォークにナイフ、そして上品な盛り付け方にさすがエベレスト街道一の高級ホテルだと感心させられた。4時過ぎ、クムジュン村に到着。喉の痛みが気になる。乾燥した空気にほこり。年々弱くなる喉。お湯を飲み、喉を湿らせるほかどうしようもない。あの空気が澄んだ屋久島が恋しい。楽しかったな〜屋久島・・・。

 ベースキャンプまで時間をかけてキャラバンを行うのは、少しずつ標高を上げて、体を低酸素に慣らす為だ。いきなり、標高を上げれば間違いなく高山病に侵される。毎年のようにヒマラヤでは、トレッカーや登山隊員が高山病で命を落とす。ヒマラヤに何度来ようが、少しずつ登らなければならない。面倒くさいと一気に駆け上がれば命取りになる。焦らず、体調を整えながらベースキャンプを目指したい。

次回の「みんなにヤッホー」はベースキャンプからになります。ルクラからの工程は、ルクラ〜パクディン〜ナムチェバザール〜クムジュン〜パンボチェ〜ディンボチェ(2泊)〜ロブチェ〜エベレストベースキャンプとなる予定です
2002年4月8日
野口健