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ヒマラヤに学校をつくろうプロジェクト 中編

マナスル基金 , 教育

2010/01/24

ヒマラヤに学校をつくろうプロジェクト 中編

ヒマラヤに学校を建てるプロジェクトをスタートさせてからまず取りかかったのは村人に対する説明会。マナスル峰山麓のサマ村に学校を建てるのだが、 必ずしも全ての村人にとって学校建設が悲願ではない。村の大人からすれば子供たちを学校に通わせるよりも畑仕事であったり、また牛の放牧であったりと、つ まり子どもたちは貴重な労働力なんですね。だから学校に通わせる事に抵抗感を示す親さえいるわけです。

 もちろん、そもそも論としてサマ村の村長や僧侶から「私たちには目がついているけれど時に見えないんです」の一言にハッとさせられ学校建設を決意した経緯がある。彼らは学ぶ事によって世界が広がるという事を私に訴えていたのだ。

 サマ村の夜に村人を集めた集会を何度も行い教育の必要性を根気よく訴え続けた。その中で特に説得力があったのがシェルパ 達の言葉であった。野口隊のシェルパ達はエベレスト周辺の出身者が多く、彼らはエドモンド・ヒラリー卿(エベレスト初登頂者)らによって建てられた学校の 卒業生であったりする。

学校の建設作業を手伝う野口。学ぶことによって世界は広がる。その思いを共有したい。

 そのシェルパ達が学校に通った事によってどれだけ世界観が広がったか、例えばシェルパ達の中からパイロットになった人、 医師になった人、弁護士になった人、経営者になった人がいるのだと、そして自分たちも英語を学び中にはフランスへ山岳ガイドの養成学校に留学したシェルパ もいること、つまり以前は単なるポーターでしかなかった彼らが最近ではプロの山岳ガイドとしてのステータスを築いてきた事など、教育によってエベレスト周 辺のシェルパ社会が大きく変化した事をサマ村の人々に伝えていた。

 前回の記事にも書いたようにマナスル峰地域はエベレスト地域のような観光のメッカではなく、ごく限られたトレッカーや登 山隊しか訪れない。またチベットとの国境も目の前にあり、逃れてきたチベット人難民もいたりする。その難民を追って今度は中国の国境警備隊によるネパール への越境行為も繰り返され、弾圧を加えられているとも耳にする。マナスル峰は未だに極めて貧しい地域なのだ。

 サマ村での集会はなかなか大変。何しろほぼ全ての村人が教育を受けていないので、意志表示の在り方も順序だったものでは なく、その時に思った事を前後の説明もなくワーとワーワーと伝えてくる。その意見に対し回答を出すと次の瞬間にまた先ほどとは違った意見を口にする。その 勢いで100人も集まれば意見交換会などまったく意味を持たない。村長もお手上げ状態で、この村で意見をまとめる事は極めて不可能に近いだろうと、何度か さじを投げてやろうかと思いもしたが学校建設は自身で決めたこと、また村長との約束であるから、これは途中で投げ出すわけにはいかないと腹をくくるしかな かった。

 そこで考えたのは、細かな説明なんかよりもまずは多くの村人との距離間をどのように縮めていくのか。彼らからすれば我々 は訳のなからない外国人でしかないのだから、まずは仲良くなること。村のお祭りに参加したり、彼らの民族衣装に身を包んで下手くそなダンスを踊ってみた り、いやそれ以上に下手くそな歌を歌ってみたり、もう何でもあり。恥ずかしがっている場合ではない。
 
  そして次に取り組んだのは村での清掃活動。サマ村の至る所にゴミが散乱しており、彼らからすればゴミが捨てられている事にはなんら違和感も抵抗感もなく、 ゴミを捨てられるのはある意味、恵まれている証だよ!ぐらいにしか感じていなかったに違いない。一緒にゴミを拾おうと声をかけても「???」と意味を理解 してくれなかった。そこでではまずはゴミを拾っている姿を彼らに見せてみようと清掃活動を始めたら、いつしか気がついたら村中の人々がニコニコ顔で参加し てくれるではないか。2年前はゴミを拾う意味すら分かっていなかった彼らが今年訪れてみたら、村の中心部からゴミが無くなっており、聞けばこの3年間継続 的に清掃活動を行ってきたとのこと。そして今では村の中にゴミの焼却炉を作ってみたらどうかなどと村人から声が上がるようになってきた。これは大きな一歩 であった。村人から「ケン」と呼ばれるようになったのもこの頃からだろう。

サマ村の伝統的な衣装を着て。まずはとにかく、距離感を縮めていくことだ。

 学校建設作業にはどうしても村人の協力も必要となる。また、彼らが少しでも建設に関われば「自分たちの学校」といった気持を抱く。これが何よりも大切なことだ。そしてその学校に自分たちの子どもを通わせたいとなればパーフェクト。

 そして今年、2月からついに建設スタート。石運びから木材の調達など村人が汗を流してくれた。私も建設現場に駆 けつけ一緒に汗を流したが、こうして一緒になって何かを作っていく、その事だけでも夢がある。もちろん、校舎を建ててからの方がソフト面を作っていくとい う次のステップのほうが大切で多くの困難が待ち受けているであろうが、ただそんな理屈よりも1つ1つこうして夢が形になっていくことが嬉しい。この嬉しい という気持ちがあれば、続けば、必ずやヒマラヤで学校を作ろうプロジェクトは成功するだろうと確信していた。

村人に学校建設の説明を行う。理解してもらうためには根気も必要。

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