本日の産経新聞に連載が掲載されました。
2023年12月14日掲載
産経新聞直球&曲球
「人類は歴史から学べないのか」
塀に囲まれ、逃げ場もない状況下で攻撃にさらされるガザ...。イスラエルへの国際世論は日増しに厳しくなってきている。しかし、同時に忘れてはならないのは、イスラム原理主義組織「ハマス」による民間人を狙い撃ちした残虐非道な行為である。
メディアはあの日、何が起きたのか、を詳細に報じ始めた。中には読むにたえないものも。女性への性暴力を繰り返した挙げ句に殺害し、体の一部を切断し、遺体は路上に投げ捨てられ...。すべてを、うのみにすることはできないが、真実はやがて明らかにされていくことだろう。
イスラエルとアラブの戦いはその都度、憎しみが深みを増し、怒りの感情を抑制できなくなる。
記憶に新しいのは、米中枢同時テロ(2001年)だ。実行犯のアルカーイダ指導者をかくまったという理由で米国はアフガニスタンに軍事侵攻し、タリバン政権を壊滅。また、イラクのサダム・フセイン政権をも崩壊させた。ひとさまの国を滅ぼすほどに怒りのエネルギーはすさまじい。
だが、フセイン政権を倒したことでイランのアラブへの脅威を食い止めていた防波堤が崩れ、イランはイラク、シリア、レバノンへと勢力を広め、いわゆる「三日月地帯」を築き上げた。
その結果、レバノンに拠点をおく民兵組織「ヒズボラ」やパレスチナのガザ地区を実効支配するハマスによる脅威が高まったとするならば、怒りに任せて軍事侵攻した米国の失策である。
イスラエルは国際社会から非難されようがハマスの殲滅(せんめつ)を目指すだろう。今のイスラエルに「人間の盾」など通用しない。それどころか、人質となっている自国民の生命より軍事作戦を優先するだろう。報道によれば、ガザの地下トンネルに海水を流し込むことを始めたという。
しかし、仮にハマスを殲滅できたとしても、これだけ多くのパレスチナ人が犠牲になれば第2、第3のハマスが現れ、戦いは永遠に続く。故にこの救いのない戦には勝者はいない。残念ながら、人類は歴史から何一つ学べないということなのだろう。
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