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センカクモグラ , 尖閣諸島 , 自然保全

「センカクモグラを守る会」設立記者会見資料

センカクモグラ , 尖閣諸島 , 自然保全

2010/10/07

「センカクモグラを守る会」設立記者会見資料

本日行われます「センカクモグラを守る会」設立記者会見の資料です。ご覧ください。

「センカクモグラを守る会」設立記者会見

はじめに
現在、過剰な開発による自然環境の破壊、地球温暖化、外来生物といった原因により、生物の多様性が急速に失われつつある。既存の取り組みでは生物多様性を保全することは困難であるという認識から、1992年5月22日、「生物の多様性に関する条約(生物多様性条約)」が採択された。同条約は1993年12月29日に発効し、2009年12月末現在において、193の国と地域が本条約を締結し、我が国も1993年に同条約を批准している。
同条約の第8条では、「生態系、生息地若しくは種を脅かす外来種の導入を防止し又はそのような外来種を制御し若しくは撲滅すること」や「現在の利用が生物の多様性の保全及びその構成要素の持続可能な利用と両立するために必要な条件を整えるよう努力すること」と記されている。しかし、たとえば我が国固有の領土である尖閣諸島魚釣島に関しては、野生化したヤギのために島の生態系に多大な影響が生じ、数多くの固有種の存続が危ぶまれているにもかかわらず、適正な対応がとられているとは言い難く、締約国として生物多様性の保全の責任を果たしていない。
そこで、登山家の野口 健、獣医学博士の山際大志郎、富山大学大学院理工学研究部准教授の横畑泰志が発起人となり、尖閣諸島魚釣島の生物多様性の保全を図るための組織として、魚釣島の固有種であるセンカクモグラの名前を冠し、「センカクモグラを守る会」の設立を決定した。

現状と課題
尖閣諸島は、南西諸島西表島の北方に位置する島嶼群であり、行政区域としては沖縄県石垣市に属している。魚釣島、北小島、南小島、久場島(黄尾礁)、大正島(赤尾礁)の 5つの島嶼とおよび岩礁から成り立っている。尖閣諸島には、センカクモグラをはじめ、センカクサワガニ、センカクツツジ等、多くの固有種が確認されている。
しかし現在、これらの生物の絶滅の危機が指摘されている。一例をあげれば、センカクモグラは、日本哺乳類学会により、危急種に指定され、またいずれも環境省および沖縄県のレッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物「動植物」のリスト)では最も絶滅のおそれの高い絶滅危惧 IA 類に指定されている。
これは、尖閣諸島の中でも最大の面積を持つ魚釣島において、1978 年に、我が国の民間政治団体によって意図的に放逐されたヤギが数百頭にまで増殖したことにより、生態系に大きな影響を及ぼしているためである。1991年に行われた調査では、島の面積がわずか3.8km2であるにもかかわらず、海上からの観察で少なくとも300頭以上が確認されている。しかしながら尖閣諸島に関しては、領有権に関する問題により、現状把握の調査自体がほとんど行われていない。2000年、2006年などに撮影された人工衛星の画像では島の表面積の10~20%がヤギの影響で裸地化しているのが確認され、2002年の航空写真ではいくつかの植物群落の消滅が確認されている。日本哺乳類学会は2002 年度大会において「尖閣諸島魚釣島の野生化ヤギの対策を求める要望書」を採択し、環境省、外務省、沖縄県および石垣市に提出した。その翌年、日本生態学会および沖縄生物学会も同様の要望書を採択し、環境省などに提出している。また、2001年には国会議員から日本政府に対して政府の認識をただし、ヤギの除去の意思を問う質問趣意書が提出されているが、いずれも政府の見解は消極的であった。

 当会の活動
このような状況において、専門家による上陸調査を実施し、最終的に魚釣島のヤギを取り除くことが喫緊の課題である。これらを行うには、尖閣諸島を管理する日本政府・内閣官房の許可が必要であり、現状では世論の強い後押しのない限り、上陸をともなう活動は不可能である。「センカクモグラを守る会」は、尖閣諸島の生物多様性の保全を図るにあたり、とかく領土問題の観点からばかり議論される現状に対して、忘れ去られた固有の生物の保全の必要性を広く世論に訴えかけていくこととする。当面は、沖縄県など日本各地で講演会などを実施し、魚釣島の生物多様性の価値と保全の緊急性を訴え、上陸調査やヤギの除去を行うことのできる社会的環境づくりを目指す。

記者会見出席者プロフィール

野口 健
 アルピニスト。1973年8月21日生まれ。37歳。高校時代に故・植村直己氏の著書『青春を山に賭けて』に感銘を受け、登山を始める。1999年、エベレストの登頂に成功し、7大陸最高峰世界最年少登頂記録を25歳で樹立。 また2007年5月にはエベレストを中国側(名称:チョモランマ)から登頂に成功。ネパール側ならびに中国側から登頂に成功したのは日本人では8人目である。2000年からはエベレストや富士山での清掃活動を開始。以後、全国の小中学生を主な対象とした「野口健・環境学校」を開校するなど積極的に環境問題への取り組みを行っている。

山際大志郎
東京都出身。了徳寺大學客員教授。神奈川県立湘南高等学校卒業。山口大学農学部獣医学科を卒業後、東京大学大学院獣医学専攻博士課程に進学し、1999年に修了(獣医学博士取得)。大学・大学院ではクジラを研究。その後一貫してクジラ問題に取り組む。1995年には南大洋鯨類環境国際調査に日本代表調査研究員として従事。東京大学動物医療センターで1年間の研修を経たのち、自らペットクリニックを開院、経営に当たる。2005年から2期6年の間、衆議院議員を務める。現在は、獣医学博士として、生物多様性の保全をはじめ地球環境問題に関する講演活動等を行っている。

横畑泰志
大阪府出身。岐阜大学農学部獣医学科を卒業後、1989年に北海道大学大学院獣医学研究科博士後期課程を修了(獣医学博士)。現在は富山大学大学院理工学研究部・理学部生物圏環境科学科 野生動物保全学研究室准教授。環境省第3次レッドリスト見直し検討委員会哺乳類分科会委員、日本生態学会自然保護専門委員会委員(魚釣島要望書アフターケア委員会委員長)、日本哺乳類学会哺乳類保護管理専門委員会幹事。野生動物研究者としてモグラ類の生態研究などを行い、地元の自然保護運動にも加わると同時に、1997年より魚釣島のヤギ問題に取り組んでいる。


*以下、「センカクモグラを守る会」に関する野口のブログ投稿記事になります。

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論文「尖閣諸島魚釣島の生物相と野生化ヤギ問題」

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